意匠法第3条の2(意匠登録の要件)に関して。
ただし、意匠登録出願は、特に文中に示した場合を除き、いかなる優先権の主張も伴わず、秘密意匠に係るものでも、分割又は変更に係るものでも、補正後の新出願でもないものとする。
また、ジュネーヴ改正協定に基づく特例は考慮しないものとする。
甲は、自ら創作した意匠イについて秘密にすることを請求して意匠登録出願Aをし、意匠権の設定の登録を受けた。甲は、当該登録意匠に係る意匠公報で、Aの願書及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本の内容を記載しないものの発行の日後に、意匠イの一部と類似する意匠ロについて意匠登録出願Bをした。このとき、意匠ロが、意匠登録を受けることができる場合はない。
この説明は?
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意3条の2ただし書の適用を受けるには、①意匠イとロについて出願人が同一であること、②後願である意匠登録出願Bが意匠イについての公報発行の日前に行われていること、この2つを満たす必要がある(意3条2のただし書参照)。また、ここでいう「公報発行」は、意20条3項に係る書誌的事項のみが記載された意匠公報の発行を指す(意3条の2ただし書カッコ書)。秘密期間経過後の意匠公報発行(意20条4項)ではない。
本肢においては、後願である意匠登録出願Bが意20条3項に規定する意匠公報の発行の日後に行われているため、甲は意匠登録出願Bについて意3条の2ただし書の適用を受けることができない。それが原則である。
しかし、令和元年改正により、関連意匠の出願可能期間が、基礎意匠の意匠登録出願の日から10年を経過する日前までに延長されている(意10条1項)。
そのため、意匠ロにつき、先願である意匠イを本意匠とする関連意匠へと補正した場合(意60条の24)には、意匠ロが意匠イを引例として意3条の2の適用を受けることもなくなる(意10条3項、同条8項。詳しくは後述)。なお、通常の意匠登録出願に本意匠の欄を追加する補正は、意匠の要旨変更(意17条の2第1項)に該当しない。
また、意匠イは秘密意匠だが、関連意匠制度を利用した場合は意3条の2ただし書についても読み替えが行われるため、意20条4項に係る秘密期間経過後の意匠公報発行の日前までの期間についても、意3条の2ただし書の適用対象となる(意10条3項)。
したがって、意20条3項の公報発行後、意20条4項の公報発行の日前に意匠登録出願Bが行われている本肢のケースにおいては、意匠ロを意匠イの関連意匠とする補正を行えば、意3条の2ただし書の適用を受けることができるようになる。そのため、本肢において、意匠ロが意匠登録を受けることができる場合は「ある」。
本肢は誤り。
なお、意10条3項は、関連意匠の登録における意3条の2ただし書の読替規定である。出願した関連意匠が秘密意匠として意匠登録を受けようとしている自己の先願意匠の一部と類似する場合、当該先願の意匠登録出願が秘密意匠として意匠公報に掲載されるまでの間は、意3条の2ただし書の規定により関連意匠の登録が可能である。しかしながら、先の意匠公報発行から秘密解除までの期間に関連意匠が出願された場合は、意3条の2ただし書が適用されないため、当該関連意匠出願が意3条の2の規定により拒絶されることとなる。同一人による先願についての意匠公報発行から秘密解除までの間にされた関連意匠の登録だけができなくなることを避けるため、関連意匠に係る意3条の2ただし書の適用については、秘密解除時に発行される意匠公報発行の日前まで同条の適用が除外されることとすべく、本項において必要な読替規定を設けることとした(青本・意10条)。
上記にさらに補足すると、意20条4項の公報発行後に先願意匠の一部と類似する意匠が関連意匠として出願された場合は、意10条8項に基づき、意3条1項1号及び2号に該当するに至らなかったものとして扱われる。要するに、基礎意匠の出願から10年を経過する日前までに関連意匠として出願すれば、意匠公報発行の日前であれ日後であれ、当該意匠は意3条の2にも該当しなくなるということ。
正直、問題を直して「関連意匠は考慮しない」とした方が説明も簡単だったのだけど、上を理解できる方が論文や口述に通用する地力がつくと思ったので、敢えて問題を直さずに解答した。
意匠 - 意匠登録の要件