令和8年 特実12

 特許権に関する事例について。なお、下記の事例やこの肢に示されていない事実をあえて仮定する必要はない。

【事例】
 甲は、物に関する発明について特許を受けた(以下、この発明を「本件特許発明」といい、その特許を「本件特許」といい、本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)。甲は、乙の販売する製品Aが、本件特許発明の技術的範囲に属すると考え、乙に対して特許権侵害訴訟を提起した。一方、乙は、製品Aの販売が本件特許権の侵害に該当しないことを、特許権侵害訴訟において反論した。

問題(選択肢 ニ)

 乙は、技術的範囲の確定に当たって、願書に添付された明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈すべきと主張した。甲は、特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解できない場合、及び一見してその記載が誤記ではないことが明らかであるといった、特段の事情もないため、明細書の記載を考慮すべきではないと主張した。この場合において、甲の主張にかかわらず、明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義が解釈される。

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解答結果

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解説

 本肢の内容は最高裁判例H3.3.8「リパーゼ事件」をモチーフにしたものである。
 審査段階における「発明の要旨」の認定の際には、特許請求の範囲に記載された内容が権利になる(特36条5項参照)という原理原則に従い、本肢にあるとおりの厳密な判断基準が用いられる。
 しかし、この判断基準は、侵害訴訟において特許発明の技術的範囲を定める場合には適用されない。

 特許発明の技術的範囲を定める場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする(特70条2項)。

 特許権の侵害訴訟においては、上記の規定に基づき、特許発明の技術的範囲が認定される。
 よって本肢は正しい。

補足

 審査段階において(特許請求の範囲に書いておらず)明細書にしか書かれていないことまで参酌して発明の要旨を認定してしまうと、権利内容のハッキリしない権利が生まれてしまい、将来的なトラブルの原因になる。そのため、審査においてはリパーゼ事件の判旨のとおり、「発明の要旨」は厳密に定められる。
 一方、侵害訴訟における特許発明の技術的範囲を認定する際にまで上記のような融通の効かない解釈をしていたら……それこそ、侵害者側は特許発明の末節をほんの少し変更するだけで、容易に特許権侵害を免れることができてしまう。
 このような理由で、特許権侵害訴訟における発明の技術的範囲の解釈では、リパーゼ事件のような審査時の判断基準は用いられない。

根拠条文・参照条文
カテゴリ

特許 - 判例・裁判例

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