【答えは貴方の中に】過去問は何年分やればいい?

短これ総研 出題分析

 今年の短答で惜しくも合格点に届かなかった人が来年に向けてまず考えるのは、「過去問をもっと広く回そう。でも、何年分やればいい??」……といった辺りではないだろうか。

 10年か
 15年か

 それとも短これ掲載分すべてか(手前味噌w)。

 先に結論を言ってしまうと。

 適切な年数は、人によって違う

 答えになってねえええええ!!! と思われるかも知れないが、まあ、怒らないwww

 個別の判定方法――つまり、他ならぬあなたなら、過去問を何年分やればいいか? その判定方法も用意するのでね。

 さて。

 この記事ではまず、R8短答の全300肢を「過去問のどこから来たのか」で一肢ずつ分類したデータをもとに、短答式試験における受験生の個人差がどこに出るのかについて、説明する。

 そのうえで、あなたに合った「過去問は何年回せばいいか」を一緒に考えていきたい。

令和8年度試験の全300肢は、どこから来ていたか?

 まず、今年の300肢を出題の素性で分類すると、こうなった。

分類肢数割合中身
同一論点15050.0%過去問とほぼ同じ論点の再出題。
同一条文6321.0%出題歴のある条文だが、論点としては初出(趣旨→主体要件など角度が変わる)
応用論点3511.7%法域をまたいだ同一趣旨の問題など、似ているが同一ではない
初出3311.0%古い過去問まで遡っても出題例が見当たらない
隣接条文186.0%同条文の項・号違いの出題歴はあるが、当該箇所は初
同一文献10.3%出典が審判便覧のもの。対象の項番は同じだったが、論点は違っていた。

 「同一論点」は過去問からほぼそのまま再出題されたもので(※同じ論点に属する問題だが、正誤は逆、という程度の違いはある)、ここが過去問演習の主戦場である。残り半分は、応用力がないと取れない肢だ。

 ちなみに、上の表は出題数が多い順に並べているが、実際の過去問との論点との近さは、同一論点>応用論点>同一条文=同一文献>隣接条文>初出 の順である。

 特に「同一条文」は、過去問に同じ条文からの出題があったといっても、その切り口自体は初出であるため、意味合い的には初出に近い。

再出題率は、どの法域もほぼ50%

 さらに、この同一論点150肢を法域別に見ると、面白いことが起きている。

 各科目の「再出題率(同一論点肢 ÷ その科目の全肢)」を出すと、

  • 特実 48 / 100 = 48%
  • 意匠 26 / 50 = 52%
  • 商標 25 / 50 = 50%
  • 条約 24 / 50 = 48%
  • 著不(著作+不競) 27 / 50 = 54%


図にするとこうなった。

図1:科目別・過去問の同一論点からの再出題率(全科目が50%前後に集中)


 性質の違う5科目が、そろって48〜54%。

 バラつきはわずか6ポイントで、ほぼ50%に張り付いている。

 出題側が再出題の比率を各科目で一定に保っているのかも……と思わせる揃い方である。

(ただし、本記事はR8単年の観察にすぎない。意図的な設計なのか、たまたまこうなっただけなのか、正確なところは複数年を見ないと区別できない)

 ともあれ、ここから言えるのは、どの科目も等しく「過去問の記憶そのままの条件反射では、半分までしか取れない」ということ。特定の科目だけ過去問で楽ができる、という逃げ道はなく、理解の上乗せは、全科目に等しく求められる。

 (個人的には、条約さえも過去問そのままの再出題は半分だったことにビックリした)

「過去問○年分」で、同一論点はどこまで拾える?

 では、本題に入ろう。

 同一論点150肢を「直近で出題された年」で振り分けて、過去◯年分やればそのうち何肢拾えるかを累積したのが、次のグラフだ。

図2:累積カバー率(折れ線)と、5年ブロックごとの上積み肢数(棒)


 折れ線(累積カバー率)を読むと、過去10年で57%、過去15年で76%、過去20年で91%。そして1ブロック(5年)ごとの上積み(棒)は、49 → 37 → 28 → 22 → 10 → 3 → 1肢と落ちていく。15〜20年あたりで折れ線が寝はじめ、棒も崩れる。

 ここが効率の壁といえるだろう。

 ただし、大事な注意がある。この棒は「その年代で新しくカバーできる論点の数」である。古い年代の棒が小さいからといって、「古い過去問は無駄」という意味ではない(理由は後述)

個人差は「同一条文・応用論点」に出る

 同一論点(暗記で取れる50%)の次に大きいのが、同一条文(21%)と応用論点(11.7%)、そして初出(11.0%)。合わせて全体の約44%を占めている。

 この帯は、単に過去問の答えを覚えているだけでは取れない。

 だからこそ、受験生の実力差、思いっきり残酷にいえば「受験生個々の地頭や素養の差」が、この帯の正解率で如実に出てしまう。

 しかも、前のセクションで見たとおり、この「理解で取る帯」はどの科目にも等しく存在する。得意科目で逃げ切る、という戦法も通らないのである。

結局、「何年分やればいいか」は2タイプに分かれる

器用型(同一条文・応用論点を器用に取れる人)

 この約3分の1を自力で確保できるので、深く回す過去問は10〜15年分(150肢中86〜114肢)で十分に上乗せできる。

 こういう「一を聞いて十を知る」タイプの受験生であれば、図2の逓減カーブから見ても、16年目以降を同じ密度で回す費用対効果は低い。

 ただし、「深く回す」のと「一度だけ通す」のは別の作業だ。

 手前味噌といわれるのを承知で言わせてもらうと、器用型の人であっても短これの全年度をとりあえず「1周だけ」手っ取り早く回す価値はある

 条文の細かい言い回しを問う問題はともかく、趣旨、語句の定義、判例、審査基準、条約の規定などを問う問題には、「一度でも出会った経験があれば、うろ覚えでも取れる」ものが少なくないからだ。

 こうした問題は、深く回す対象(10〜15年)の外側に、ロングテールで散らばっている。先ほどのグラフでいえば、古い年代の小さな棒(久々に復活するスリーパー論点)を、ほぼタダ同然のコストで拾い集めるイメージだ。

 つまり、器用型に属する人にとっての最適解は、「直近10〜15年を深く+全年度を一度だけ浅く」。前者で土台を固め、後者で取りこぼしの長い尾を回収する……そんなやり方となる。

不器用型(同一条文・応用論点をほとんど落とした人)

 応用力が足りない分を、演習量で埋めるのが基本戦術となる。

 ところが、同一論点は何年遡っても肢ベースで全体の50%が上限。20年やっても再現で取れるのは肢の45%前後にすぎない。

 しかも、短答は5肢で1問。特に「いくつあるか問題」を確実に取るには複数の肢を正しく判断する必要があるので、「肢の45%が再現で取れる」だけでは、合格点などはるか彼方である。

 ということで(?)、不器用型の人であれば、演習範囲は20年以上、なんなら短これ掲載分すべてに広げる価値がある。

(※こう言っている筆者も間違いなく不器用型寄りである)

「古い過去問は無駄」は誤読

 ここで先ほどの棒グラフの話に戻ろう。

 グラフは各論点を「直近の出題年」で1回だけ数えている。つまり、特29条の2(拡大先願)や特162条(前置審査)のような超頻出論点は、何度出ていようと “直近で出た近年の分” に計上されている。

 言い換えれば、古い年代の小さい棒に残っているのは「久しぶりにR8で復活したスリーパー論点」だけ。けれども古い過去問の中には、集計に現れないだけで、再々出題や再々々出題、あるいはそれ以上の頻出論点として、繰り返し収録されているものも数多く存在するわけだ

 古い過去問が役立つ理由は、実は2つあって。

  1. たまに復活するスリーパー論点を拾える(低頻度・低ROI)
  2. 頻出論点の核に、もう一度、もう何度も当たれる(こちらが本命)

「広く回す」ことは、理解にもつながる

 特に、不器用型の人が20年以上・あるいは短これ全部にまで演習範囲を広げる本当の意義は、レアなスリーパー狙いではない。

 特29条の2や特162条、意3条の2のような、手変え品変え繰り返される頻出論点に何度も当たることで、弱点だった条文への “土地勘” ——すなわち応用力が育つことにある

 器用型の人は、その土地勘を最初から持っている(あるいは手に入れるのが早い)。だから反復の追加価値が小さく、10〜15年で足りてしまう。

 強い人は「理解で近道」、まだ手応えのない人は「物量で急がば回れ」。ゴール(条文単位の習熟)は同じで、そこへ至る道が違うだけ。

 どちらも正解なのである。

ということで、自分がどちらのタイプかを知ろう

 あなたがこの記事のいちばんの想定読者——今年の短答で惜しくも届かなかった人——なら、最高の診断材料がもう手元にあるはずだ。

 R8本番の、あなた自身の答案(をメモしたもの)

 また、こちらでも、令和8年弁理士試験・短答式の全肢について、論点等が合致する過去問との対応表を用意した。(※要ログイン・過去問へのアクセスは基本的に短これPLUS会員限定)

  ↓  ↓  ↓

【短これPLUSユーザ様向け】令和8年度弁理士試験 短答式・「肢別」過去問対応表

 この対応表をもとに、同一条文・応用論点タイプの肢(暗記では取れず、条文の理解が要る肢)で、安定して正誤を判断できていたかを振り返ってみよう。

  • 取れていたなら:直近10〜15年を深く+全年度を一度だけ浅く。土台を固めつつ、ロングテールの取りこぼしを回収する
  • 取れていなかったなら:演習範囲を過去20年以上に広げ、反復演習で土地勘を作りにいく

「過去問は何年分?」という問いは、突き詰めれば「自分はどこで点を落としていたのか?」という問いである。

 年数は、その答えから自然に決まる。

おわりに——年数は、自分との対話で決める

 ここまで見てきたとおり、過去問を何年分回すべきかについては個人差がある。

 そしてその答えは、誰かに聞かなくても、自分の答案を見ればわかる。同一条文・応用論点で点が取れていたのか、取れていなかったのか。

 判断材料は、あなたの手元にある。

 だから、過去問をどれだけ回すかは、あくまで自分との対話で決めてほしい

 「受験機関の先生がこう言ったから」
 「先輩合格者が何年やれと言ったから」

 ——そんな他人の基準を、そのまま自分の答えにしてはいけない。あなたに必要な年数を本当に知っているのは、あなたの答案だけである。

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