意3条の2を見切った!!|過去問データで判明した準公知の出題類型まとめ

意3条の2を見切った!! 条文・制度解説

平成11年〜令和7年 88問の完全分析

意3条の2とは何か?

 意匠法3条の2(いわゆる準公知による拒絶)は、先願意匠が公報に掲載された後に後願意匠が出願された場合に、後願意匠の登録を拒絶するための規定だ。条文の構造自体はそれほど複雑ではないが、弁理士試験では毎年のように出題され、かつ、練習すれば一応解けるようにはなるものの、どこかモヤっとした掴みどころのなさが残る論点である。

 (↑)この「掴みどころのなさ」については、後ほど説明したい。

 本記事では、平成11年から令和7年までの過去問88問を分析し、意3条の2関連の出題を11の類型に分類した。「どこが問われるのか」を類型ごとに整理し、意3条の2に関連する問題を完全攻略してもらいたい。

意3条の2の要件

 基本中の基本となるが、問題を解く上で覚えておくべき同条発効の基本的な要件は4つ。

  ↓  ↓  ↓

  1. 後願(本願)の出願後、先願意匠が意匠公報により公開された。
  2. 後願(本願)に係る意匠が、先願意匠の一部と同一又は類似の関係にある。
  3. 先後願に係る意匠の出願人が、査定時において同一ではない。(ただし書)
  4. 先後願に係る意匠の出願人が同一であり、なおかつ後願意匠が先願意匠の公報発行の日前までに出願されている。


特29条の2との違い

 意匠法3条の2は、準公知ともいい、特29条の2(いわゆる拡大された先願の地位)の意匠法版といった趣きのある条文である。

 ただし、上の要件を当てはめて問題を問いていくうえで特29条の2と大きく異なるところがあって。それは、意3条の2の場合、各要件の該当性につき、細かい判断が求められることだ。

  ↓  ↓  ↓

  • 意匠公報の公開? なら、たとえば国際公表は意3条の2の要件に入るの?(※入りません)
  • 先願意匠の一部と同一又は類似? それは形状のみの話?(※違います)
  • 出願人の同一って、どの時点で?(※査定時、拒絶理由の通知時です)

 なので、表層的な要件だけを受験機関のレジュメなどでさらっと覚えた気になっていると、いざ当てはめを行おうという段で結構迷う。

 意3条の2の難しさのひとつは、間違いなくそういうところにある。

出題全体の俯瞰――88問を11類型に分類

 まず全体像を把握しよう。

 以下の表は、88問を出題頻度順に並べた完全分類表だ。

コード出題パターン件数割合論点の核心
A王道(基本的な発効あり)18件20.5%要件を満たす基本形。先後願の意匠が同一または類似で、公報発行あり、出願人不同一
B出願人同一(ただし書き)15件17.0%ただし書き該当(発効なし)と非該当(発効あり)の両パターンが混在
C意3条の2非該当(他条文)11件12.5%実は意9条1項や意3条1項の問題。引っかけとして頻出
D先願意匠の範囲(破線部・組物・部分意匠等)9件10.2%先願意匠の「どこまでが引例になるか」を問う。破線部・組物の構成物品・部分意匠
E出願人同一の判断(完全同一・査定時・名義変更等)8件9.1%「完全同一」「査定時判断」「特29条の2との違い」を問う応用問題
F秘密意匠関連8件9.1%秘密期間中の待ち通知、意20条3項公報の基準日など、令和以降も出題増加中
G先願の公報発行要件(取下・拒絶・参考図等)5件5.7%先願が取り下げ・拒絶された場合でも公報が発行されるか否かが論点
H創作者同一はただし書き不適用4件4.5%「創作者同一≠出願人同一」。ただし書きに該当しないため発効あり
I国際出願・パリ優先権関連4件4.5%令和4年に集中出題。国際公表は要件でない点が核心
J後願意匠が非該当(用途機能不一致・先願の一部でない等)4件4.5%後願意匠が先願意匠の「一部」に同一・類似でない場合は意3条の2不適用
K関連意匠への補正による回避2件2.3%法改正(平成18年)により後願を関連意匠に補正することで適用回避が可能に

 最頻出はA「王道」(18件・20.5%)で、5問に1問は基本要件を満たすかどうかの確認問題。次いでB「出願人同一」(15件・17.0%)C「他条文への誘導」(11件・12.5%)と続く。

 上位3類型だけで全体の約50%を占める。

 注目すべきはCの多さだ。11件(12.5%)が「意3条の2に見せかけた別条文の問題」であり、これは引っ掛けでこそあるものの、少し慣れれば瞬殺できる問題だ。ぶっちゃけ「とてもやさしい論点」といえる。

各類型の解説と攻略ポイント

A. 王道(18件)――まず基本要件の確認から

 王道問題は、先に紹介した意3条の2の要件すべてを満たすかどうかを素直に問うもの。

 このパターンに該当するものには特別な引っ掛けがなく、本当の典型例なので、絶対に落としてはならない。

出題例

 令和3年 意匠03 選択肢1


B. 出願人同一(15件)――ただし書きの「発動条件」を正確に

 15件中、ただし書きが「適用あり(発効なし)」のケースが9件、「適用なし(発効あり)」のケースが6件である。この2つのサブパターンを確実に区別することが肝要だ。

ただし書の適用あり(意3条の2発効なし)の条件:

  • 後願が先願の意匠公報公開日「前」に出願されていること。
  • 出願人が完全同一であること。

 この両方を満たす場合のみ、ただし書きの効力が発生し、意3条の2は適用されない。

ただし書の適用なし(意3条の2発効あり)の条件:

  • 後願が先願の意匠公報公開日「後」(同日を含む)に出願されている。

 この場合は、出願人が同一であってもただし書きが適用されない。つまり、意3条の2が発効する。

出題例

 平成11年 問題30 選択肢2

 平成17年 問題56 選択肢2


C. 意3条の2非該当(11件)――「別条文」への誘導を見抜け

 典型的な引っ掛けパターン。11件の内訳は、意9条1項(先後願の意匠が全体として類似)が5件、意3条1項2号・3号(先願の公報発行後に後願が出願)が6件である。

 「先後願の意匠が全体として類似している」場合は意9条1項(先願主義)の問題であり、意3条の2は「先願意匠の一部」との同一・類似を問う規定であるから適用されない。

 また、先願意匠が公報に掲載された後に後願が出願された場合は、もはや「公知意匠」となっており意3条1項の問題になる。

出題例

 令和6年 意匠01 選択肢3


D. 先願意匠の範囲(9件)――「どこが引例になるか」

 先願意匠が全体意匠でない場合において、それが意3条の2の「引例」として機能するかを問う問題群である。3つのサブパターンがある。

  • 破線部:先願意匠が部分意匠である場合に、その全体図において破線で示された部分も引例となる(3件)

  • 組物:先願意匠が組物意匠である場合に、その構成物品のひとつと後願が類似していれば意3条の2が発効する(3件)

  • 部分意匠・部品:先願意匠が部分意匠の場合、後願がそのさらに一部である部品と同一・類似であれば発効する(3件)

出題例

 平成20年 問題07 選択肢5


E. 出願人同一の判断(8件)――細部の論点

 意3条の2ただし書きの「出願人同一」要件について、その解釈の細部を問う問題群である。主要な論点は以下のとおり。

  • 出願人名義は「完全同一」が必要:共同出願の場合はすべての出願人が同一でなければならない(平成23年、平成26年)

  • 判断時期は「査定時」:後願の出願後に名義変更を行い、先後願の出願人が同一になった場合も、査定時に同一であれば適用される(平成27年、令和3年)

  • 特29条の2との違い:特許法29条の2は後願の出願時に出願人同一を要求するが、意3条の2ただし書きは査定時までに同一であればでよい(※上(↑)と同じだが、重要な比較論点なので補足)

出題例

 令和4年 意匠03 選択肢1


F. 秘密意匠関連(8件)――近年の頻出論点

 令和以降に出題が集中しており、今後も要注意の類型である。秘密意匠が先願の場合、意3条の2の要件のひとつである意匠公報の公開時期が通常とは異なる点が核心である。

 通常、意3条の2の発効は「先願の意匠公報掲載」を基準とするが、秘密意匠の場合は秘密期間中に通常の(=意匠の内容全てを公開する)意匠公報は発行されない。発行されるのは書誌的事項のみが記載された意匠法20条3項に基づく公報である。

 したがって、秘密意匠が先願である場合にただし書きを適用するためには、後願がこの「意20条3項公報の発行日前」に出願されている必要がある。

 また、秘密期間中は意3条の2に基づく拒絶査定は行われず、「待ち通知」が発せられるにとどまる(平成27年出題)。(※正式な拒絶理由通知が出るのは、あくまで先願が秘密解除され、正式に公報公開された後である)

出題例

 令和5年 意匠10 選択肢4


G. 先願の公報発行要件(5件)――「公報が発行されるか否か」

 意3条の2が発効するには先願意匠が公報に掲載されることが必要である。先願が拒絶・取り下げられた場合でも公報が発行されるかどうかが論点となる。

拒絶されても公報発行あり:

  • 意9条2項後段(最先出願の認定)に該当して拒絶された場合(意66条3項)

 この場合は、たとえ先願が拒絶されていても、先願の地位が残り、意匠公報も発行される。したがって、意3条の2の発効要件を満たし得る(平成12年、平成16年、令和6年に出題)。

公報発行なし:

  • 先願が自主的に取り下げられた場合は公報が発行されないため、意3条の2は発効しない(平成24年出題)。
  • 先願の参考図にのみ示された意匠も、引例とはなり得ない(平成23年出題)。
出題例

 令和6年 意匠01 選択肢2


H. 創作者同一ではただし書き不適用(4件)

 シンプルだが確実に正答できなければならない論点。

 ただし書きの要件は「出願人同一」であり「創作者同一」ではない。先後願の創作者が同一であっても、出願人が異なれば意3条の2ただし書きは適用されず、意3条の2は発効する。

 平成21年、平成26年、平成29年、令和3年と継続的に出題されており、正確に理解しておく必要がある。

出題例

 令和3年 意匠03 選択肢3


I. 国際出願・パリ優先権関連(4件)――令和4年に集中

 令和4年 意匠03の選択肢2〜5でまとめて4問が出題されたという異例の出題パターン。国際出願が先願の場合に特有の論点が問われた。

  • 「国際公表」や「国内公表」は意3条の2の発効要件ではない(意匠公報の発行が基準)

  • PCT国際出願からの変更出願の場合も同様

  • 国際出願が先願の場合、出願人名義変更は特許庁ではなく国際事務局に手続する必要がある

  • パリ優先権を伴う場合でも時系列を整理すれば王道と同様に判断できる

出題例

 令和4年 意匠03 選択肢4


J. 後願意匠が非該当(4件)――「先願意匠の一部」でないケース

 意3条の2は、後願意匠が「先願意匠の一部」と同一または類似の場合に適用される。後願意匠が先願意匠の「一部」に該当しない場合は、そもそも意3条の2の適用対象外となる。

先願利用意匠:

 後願意匠が先願意匠を利用しているが、先願意匠の「一部」と同一・類似ではない場合は非該当(令和元年、令和3年)。

用途及び機能の不一致:

 先後願の意匠の(※比較対象部分の)用途および機能が一致していない場合も、意3条の2は適用されない(平成29年)。

出題例

 令和元年 意匠03 選択肢4


K. 関連意匠への補正による回避(2件)――法改正により生じた穴

 関連意匠制度に関する2度の法改正(平成18年・令和元年)により、後願意匠を先願の関連意匠として補正することで意3条の2の適用を回避できるようになった。

 この救済手段の存在により、出題当時と正解が入れ替わった問題が2問出題されている(平成19年、平成21年)。

 もっとも、これらは出題当初から意図して問われた論点ではないわけだが、あえて関連意匠制度の利用を例外として解答するタイプの出題も、今後は出てくる可能性がある。

出題例

 平成21年 問題38 選択肢ハ


まとめ――類型別の優先度と学習アドバイス

 88問の分析から学習の優先度を示してみると……。

優先度S(最優先。必ず得点すべき類型)

  • A(王道・18件):基本要件の確認。全問正答が目標。特にR6では論文にも出題されたため、要件ぐらいはソラで言える必要がある。

  • B(出願人同一・15件):ただし書き「適用あり」と「適用なし」の分岐条件を完璧に

  • C(他条文への誘導・11件):「意9条か意3条の2か」「意3条1項か意3条の2か」の即判別が必須

  • G(公報発行要件・5件):意9条2項後段とセットで理解したい

 ちなみに、上記を優先度Sにした理由として、出題頻度だけでなく、論文への出題可能性も考慮させてもらった。

優先度A(差をつけられる類型)

  • D(先願意匠の範囲・9件):破線部・組物・部分意匠の3サブパターンを横断理解

  • E(出願人同一の判断・8件):「完全同一」「判断時は査定時」

  • F(秘密意匠・8件):令和以降の出題増加に対応。意20条3項の公報発行を軸に整理


優先度B(上位合格を狙う層向け)

  • H・I・J・K(各2〜4件):出題数は少ないものの、一度理解すれば確実に得点可能


おわりに・意3条の2が難しいのは、ある悪問のせい?

 最初に「後ほど説明する」と言ったまま、放ったらかしていた話題について。

 意3条の2が今ひとつ掴みどころがない理由は、ある不可解な出題にある、と思っている。

その問題

 H28 意匠04 選択肢5

 

 詳しくは上の問題を解き、解説まで読んでもらえればわかるが……

 この問題、与件の読み解き方次第で○とも×とも言えてしまう問題なのである。

 いや、形式的には○ともいえるのだが、その場合、○になる理由を正しく読み解けていないと、かえって意3条の2の全体理解を妨げられてしまうこととなる。

 正直、短答としては悪問中の悪問だと思うが、○×それぞれの立場から論じられるぐらいになれば、意3条の2を完全に理解できたといってよいだろう。

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 短これPLUS会員さま限定ですが、別記事にて意3条の2・出題パターン別の全肢リンクを掲載します。

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短これ|弁理士試験 短答式・肢別過去問これくしょん

 本記事は、弁理士試験・短答式 肢別過去問これくしょん『短これ』に収録した過去問データ(平成11年〜令和7年・全88肢)をもとに分析・作成したものです。

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