訂正審判/訂正の請求を見切った!!|過去問176肢から判明した11大出題パターン

訂正審判/訂正の請求を見切った!! 条文・制度解説

目次

はじめに――訂正、ややこしいねぇスギ

 弁理士試験の短答で、受験生を悩ませる分野のひとつが「訂正」だ。

 訂正審判、特許異議申立てにおける訂正の請求、特許無効審判における訂正の請求。(※あと、実14条の2の訂正もあるけど、記事が長すぎますねぇスギだったので、別記事に分けます)

 この3つ、似ているようで、微妙に違う。

 しかも、訂正の目的、訂正できる範囲、独立特許要件、請求できる時期、取下げ、補正……と、関連する条文も多い。

「訂正の目的は4つ!」

 ここまでは覚えている受験生も多いだろう。

 だが、それだけで過去問を解けるかというと、そう簡単にはいかない。

 たとえば、

  • 特許無効審判が請求項1について係属している場合、請求項2について訂正審判を請求できるか?
  • 訂正可能な範囲は願書に添付した明細書等? 願書に「最初に」添付した明細書等?
  • 訂正審判と訂正の請求では、取下げができる時期は同じか?
  • 訂正の請求には、常に独立特許要件が必要か?

 このあたりを聞かれると、途端に怪しくなってこないだろうか。

訂正制度も、過去問を全部調べてみた。

 そこで今回も、短これに収録されている訂正審判・訂正の請求に関する過去問を総ざらいしてみた。

 分析対象は、176肢(R8からH4)。

 そして、これらを出題論点ごとに分類した結果、11種類の出題パターンに整理できた。

 さらに興味深いことに、最も出題が多かったのは「訂正の目的」ではなかった。

 最頻出は「訂正審判の請求時期」。続いて「取下げ」「訂正審判の手続上の特則」と、手続に関する問題が上位を占めている。

 つまり、訂正制度の短答対策では、単に訂正の実体的要件を暗記するだけでなく、手続の違いを正確に理解することが重要なのだ。

 本記事では、176肢を分類した11パターンを、出題数の多い順に紹介する。

 本記事の出題数は、収録過去問の各肢を主たる論点ごとに分類したものであり、複数論点を含む肢も、原則として1つのパターンに分類している。そのため、選択肢の集計結果には、パターンの切り分け方によって若干の誤差が生じるかも知れない。その点、ご容赦願いたい。

筆者注


1.訂正審判/訂正の請求とは何か

 詳細な条文解説は他書に任せるとして、ここでは問題を解くために必要な基本事項だけを整理しておこう。

簡単にいうと

 特許権の権利内容は、設定登録された後であっても、一定の要件のもと、特許請求の範囲、明細書又は図面について訂正することができる。

 とはいえ、これら登録後の訂正が自由に認められるわけではない。

 対世的効力を有する特許権の内容は、第三者の事業活動にも影響を与える。そこで、訂正の目的や範囲について厳格な制限が設けられている。

特許法上の訂正には3つの手続がある(※実14条の2については別記事で解説)

 まず、ここが大前提。

 訂正制度には、大きく分けて次の3つの手続がある。

手続根拠条文概要
訂正審判特126条特許権者が独立して請求する審判
特許異議の申立てにおける訂正の請求特120条の5異議申立ての手続内で行う訂正
特許無効審判における訂正の請求特134条の2無効審判の手続内で行う訂正

 この3つを混同すると、問題を解くのが一気に難しくなる。

 特に、訂正審判は独立した審判手続だが、訂正の請求は異議申立て又は無効審判の手続内で行うという違いを押さえておこう。

 なお、以下では特許異議の申立てを「異議」、特許無効審判を「無効審判」と略記する。

訂正審判・訂正の請求・訂正の再抗弁の違い

訂正審判とは?

 たとえば、特許請求の範囲が広すぎてその一部に無効理由を抱えているような場合に、第三者にその無効理由を突かれる前に請求項を自主的に減縮することで、その無効理由を解消できる。これが訂正審判の典型例だ。

訂正の請求(異議/無効審判の両方に存在)とは?

 一方、無効理由について、第三者から異議申立てや無効審判で突かれた後、その係争中に審判長に対して請求し、権利内容を訂正して当該特許権に内在する無効理由を解消していくのが「訂正の請求」である。

訂正の再抗弁とは?

 また、特許権侵害訴訟の場で、被告が特許無効の抗弁(特104条の3)を持ち出して対抗してきた場合に、原告である特許権者が、訂正(※)によって無効理由を解消し、さらに訂正後の特許発明にも被告の製品等が抵触することなどを主張して反撃するのが「訂正の再抗弁」である。

 「被告きさまの抗弁ざれごとなどもはや効かぬ! 無効理由を克服し、転生した我が権の前に散れィ!!」

 ……って感じで、要するに、被告の攻撃を受け流しつつ、さらなる一撃を返すわけだ。

※なお、侵害訴訟は異議申立てとも無効審判とも異なる手続だ。 そのため、侵害訴訟で被告から特許無効の抗弁を主張されたからといって、それだけで「訂正の請求」ができるわけではない。

 特許庁に異議申立てや無効審判が係属しておらず、訂正審判の請求が制限される事情もなければ、特許権者は「訂正審判」を利用することになる。

 一方、異議申立てや無効審判の手続内では、法律で定められた機会に「訂正の請求」を行うことができる。

 なお、「訂正の再抗弁」はもっぱら論文マターであり、今回分析した短答過去問176肢には登場していない。論文試験では重要な論点なので、ここでは簡単に紹介するにとどめる。

訂正の目的は4種類

 訂正審判では、次の4つの目的に限って訂正が認められる(特126条1項ただし書各号)。

  1. 特許請求の範囲の減縮
  2. 誤記又は誤訳の訂正
  3. 明瞭でない記載の釈明
  4. 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を、引用しないものとすること

 異議・無効審判における訂正の請求についても、同様の訂正目的が規定されている。

 ただし、4つの目的のどれかに当てはまれば、無条件で訂正できるわけではない。訂正可能な記載の範囲、実質的拡張・変更の禁止、独立特許要件など、さらに確認すべき要件がある。

 このあたりは後ほど、出題パターンごとに解説しよう。


2.過去問176肢の全体像

いよいよ本題。

今回分析した176肢を、11種類のパターンに分類した結果がこちらだ。

  ↓  ↓  ↓

11パターン別出題数

パターン内容肢数
A訂正審判の請求時期25
B取下げ20
C訂正審判の手続上の特則20
D訂正可能範囲:「願書に添付」と「願書に “最初に” 添付」17
E承諾が必要な者17
F訂正明細書等の補正16
G訂正の請求の審理手続15
H訂正の目的・対象14
I独立特許要件14
J訂正の請求ができる時期10
K請求項ごと・一群の請求項8
合計176



 ちなみに、上位5パターンだけで99肢。全体の約56%を占めている。

 しかも、A〜Cの上位3パターンは、いずれも手続に関する論点だ。

 訂正制度の学習というと、まず「訂正の目的」「訂正できる範囲」「独立特許要件」を覚えようとしがちだが、短答ではそれ以外の手続的な知識も相当に重要であることが分かる。

 もっとも、出題数が少ないパターンを捨ててよいという意味ではない。

 むしろ、逆に考えよう。出題される論点がある程度決まっているのだから、それぞれのパターンを一度整理してしまえばよい。

 以下、順番に見ていく。

3.パターン別攻略

パターンA 訂正審判の請求時期(25肢)

 最も出題数が多かったのが、訂正審判を「いつ請求できるか」という問題だ。

 基本となるのは、特126条2項と8項。

 この2つを押さえるだけでも、多くの問題に対応できる。

出題例


ひっかけ① 無効審判・異議申立てが係属している間は請求できない

 特126条2項によれば、訂正審判は、特許異議申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時から、その決定又は審決が確定するまでの間、請求することができない。

 たとえば、請求項1と請求項2からなる特許について、請求項1だけを対象とする無効審判が係属していたとしよう。

 この場合、

「請求項2は無効審判の対象になっていないのだから、請求項2について訂正審判を請求できるのでは?」

 ……と思うかもしれない。

 しかし、答えは×。

 無効審判の対象外の請求項についても、訂正審判は請求できない。

 請求項ごとに請求された場合には、すべての決定又は審決が確定するまで、訂正審判の請求が制限される。

 この論点は令和7年、令和5年にも出題されている。

【出題例:令和7年 特実04 イ/令和5年 特実15 ロ】

ひっかけ② 特許権の消滅後でも請求できる

 次は特126条8項。

 訂正審判は、特許権の消滅後でも請求できる。

 たとえば、存続期間の満了や特許権の放棄によって特許権が消滅した場合でも、訂正審判を請求できる場合がある。

 なぜか?

 たとえ審判請求時点でその対象となる特許権が既に消滅しても、過去の侵害行為について損害賠償請求などが問題になる可能性があるからだ。

 そのような場合に、訂正によって無効理由を解消する必要が生じることもある。

 したがって、「特許権が消滅したから訂正審判は請求できない」という覚え方は間違い。

ひっかけ③ ただし、取消し・無効になった後は別

 もっとも、特126条8項にはただし書がある。

 特許が取消決定によって取り消され、又は無効審判によって無効にされた後は、訂正審判を請求できない。

 ここは、単なる特許権の消滅と区別する必要がある。

  • 存続期間満了・放棄:訂正審判を請求できる場合がある
  • 取消決定による取消し:請求できない
  • 無効審判による無効:請求できない

 「特許権の消滅」と「特許の取消し/無効(※どちらも遡及消滅)」は別物。

 この違いを問う問題は、令和7年、令和5年、令和2年などで出題されている。

【出題例:令和7年 特実04 ホ/令和2年 特実13 ニ】

パターンB 取下げ(20肢)

 続いて多いのが、取下げに関する問題。

 ここは訂正審判と訂正の請求の違いが特に重要になる。

 まず、訂正審判の請求は、審決が確定するまで自由に取り下げることができる(特155条1項)。審判請求の取下げについての一般原則が適用されている。

出題例


ひっかけ① 訂正の請求の取下げ

 異議・無効審判における訂正の請求には、それぞれ取下げに関する特則がある。

 特に無効審判における訂正の請求では、特134条の2第6項以下が重要だ。

 ここで問われるのは、訂正の請求そのものを取り下げられる時期と、訂正明細書等の補正ができる時期の違いである。

 両者は同じではない。

ひっかけ② 請求項ごとの取下げ

 訂正の請求は、請求項ごとに扱われる場合がある。

 ただし、引用関係にある請求項については「一群の請求項」という単位も関係してくる。

 このため、「請求項ごとに訂正を請求できるのだから、取下げも常に請求項ごとに自由にできる」と考えてはいけない。

パターンC 訂正審判の手続上の特則(20肢)

 訂正審判は「審判」という名前だが、無効審判と同じように考えてはいけない。

 訂正審判は、特許権者が特許庁長官に対して請求する査定系の審判だからだ。(※特許無効審判は、被請求人である特許権者に対して請求する当事者系の審判である)

出題例


ひっかけ① 訂正審判には参加制度がない

 無効審判などの当事者系審判では、利害関係人の参加が問題になる。

 しかし、訂正審判では、同じように参加できるわけではない。

 「審判だから参加できる」という思い込みは禁物。

ひっかけ② 審理の併合・一事不再理

 特許法の審判に関する一般規定が、訂正審判にも当然に適用されるとは限らない。

 審理の併合、一事不再理、当事者の手続保障などについては、訂正審判に適用される規定と適用されない規定を区別する必要がある。

 特に、無効審判のような対立当事者を前提とする制度を、そのまま訂正審判に持ち込まないこと。

ひっかけ③ 不適法な請求と審決

 訂正審判の請求が不適法である場合、どのような手続で処理されるか。また、訂正が認められない場合に、どのような審決がされるか。

 このような審判手続の基本事項も出題される。

 ここは条文の準用関係を確認しながら整理しておきたい。

パターンD 訂正可能範囲:「添付」と「最初に添付」(17肢)

 ここは、細かな文言の違いが正誤を左右する分野だ。

 特126条5項を確認してほしい。

 訂正は、原則として願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしなければならない。

 ただし、誤記又は誤訳の訂正には特則がある。

出題例


ひっかけ① 誤記・誤訳の訂正では基準が異なる

 通常の訂正と、誤記・誤訳の訂正では、基準となる書類が異なる。

 誤記又は誤訳の訂正については、願書に “最初に” 添付した明細書等が基準になる。

 ここで、

  • 願書に「添付した」明細書等
    →現バージョン(すでに訂正が行われているなら、訂正を経た最新バージョン)
  • 願書に「最初に添付した」明細書等
    →最初のバージョン(すでに訂正が行われていようがなんだろうが、オリジナルの出願時の書面)

  という文言を読み飛ばさないこと。

 短答では、たった数文字の違いで正誤が変わる。

ひっかけ② 外国語書面出願の場合

 外国語書面出願では、外国語書面や翻訳文との関係も問題になる。

 特に、誤訳の訂正については、原文の記載内容との関係を確認する必要がある。

 「最初に添付した」という言葉だけを機械的に覚えるのではなく、何を基準として新規事項の追加を判断するのかを理解しよう。

ひっかけ③ 新規事項でなければ、どんな訂正でもアリ?

 訂正が記載事項の範囲内であっても、それだけでは足りない。

 特126条6項により、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更する訂正は禁止されている。

 したがって、

 「新規事項の追加ではないから訂正できる」とは限らない。

 新規事項追加の禁止と、実質的拡張・変更の禁止は別々に判断する。

 たとえば、「技術A & B & C」で1つの請求項を構成している場合を考えてみよう。

 これを、「技術A & B」に訂正することは、原則として認められない。

 AND条件を1つ削除すると、発明特定事項による限定が1つ解除され、権利範囲が実質的に拡張されるからだ。

 請求項の記載内容を削れば、なんでも減縮として認められるわけではないということだ。

 逆に、

 「技術A & B & C “& D”」に訂正する場合はどうだろうか。

 こちらはAND条件を1つ追加しているので、通常は権利範囲が狭くなる。

 したがって、追加する技術Dが明細書等に記載されているなど、他の訂正要件も満たすのであれば、特許請求の範囲の減縮として認められ得る。

 つまり、AND条件の削除は権利範囲の拡張、AND条件の追加は権利範囲の減縮というのが基本的な考え方だ。

※各条件が独立して権利範囲を限定している場合を想定した単純化した例である。

ちなみに、上記の考え方(減縮とはどういうものか)については他人に説明できるぐらい理解しないと、論文で訂正や補正が出題されたときに全く太刀打ちできないので、受験機関に通っているのであれば先生に質問しまくってでも必ずモノにしておきたい。


パターンE 承諾が必要な者(17肢)

 訂正審判の請求に際して、誰の承諾が必要なのか。

 基本となるのは特127条だ。

出題例


ひっかけ① 専用実施権者・質権者

 特許権について専用実施権や質権が設定されている場合、訂正によってそれらの権利者の利益に影響が及ぶ可能性がある。

 特許権者が権利無効をおそれて1人で勝手に権利範囲を減縮しまくった場合、その権利についてライセンスを受けている実施権者からすれば、

うわっ…私の権利範囲、狭すぎ…?

 ……となってしまうからである。

 いろいろ脱線してしまったが、訂正審判の請求にあたっては、専用実施権者又は質権者があるときはその事前承諾が必要になる(特127条)。

ひっかけ② 通常実施権者は?

 ここは法改正の影響が大きい(R3改正)。

 現行法では、通常実施権者の承諾は、訂正審判の請求要件とされていない。詳しくは青本の特127条を読もう。一言でいうと、通常実施権者は沢山いるケースも多く、全員の承諾を取らない限り訂正できないとなると、実質的に訂正できなくなってしまう場合が生じるからである。

 昔の教材で「通常実施権者の承諾が必要」と覚えている場合は注意してほしい。

ひっかけ③ 法定通常実施権者・独占的通常実施権者

 通常実施権には、許諾によるものだけでなく、法律の規定に基づいて発生するものもある。

 また、独占的通常実施権と専用実施権は、名称が似ていても法律上の権利の性質が異なる。

 「法定」「独占的」といった強い言葉に引っ張られて、専用実施権者と同じように考えないこと。

パターンF 訂正明細書等の補正(16肢)

 訂正審判の請求や訂正の請求をした後、その訂正明細書等を補正できる場合がある。

 基本となるのは特17条の5(各項)。「いつでも補正できる」わけではない。

 あと、概念として「訂正審判等の請求書の補正」と「訂正に係る明細書等の補正」はまったく別なので、区別して覚えること。

  ↓  ↓  ↓

補正の対象根拠条文・制限
特許異議申立書特115条2項:要旨変更禁止とその例外
特許無効審判の請求書特131条の2第1項・第2項:要旨変更禁止と審判長の許可による例外
訂正審判の請求書特131条の2第1項:要旨変更禁止とその例外
訂正の請求に係る明細書等(異議)特17条の5第1項:指定期間内に限る
訂正の請求に係る明細書等(無効審判)特17条の5第2項:指定期間内に限る
訂正審判における訂正明細書等特17条の5第3項:審理終結通知前(審理再開の場合を含む)

 丸暗記は厳しいと思うので、問題演習のたびに根拠条文を確認して、自然に覚えていけばいいかと。

出題例


ひっかけ① 訂正審判における補正

 訂正審判では、訂正拒絶理由の通知(特165条)を受けた場合など、法定の期間内に訂正明細書等を補正できる。

 補正の機会と時期を押さえよう。

ひっかけ② 異議・無効審判における補正

 訂正の請求においても、訂正明細書等の補正が認められる場合がある。

 しかし、その補正可能時期は、訂正審判と完全に同じではない。

 特120条の5、134条の2、17条の5を組み合わせて判断する必要がある。

ひっかけ③ 補正と新たな訂正請求は違う

 ここも概念を区別しておきたい。

  • 訂正の請求:訂正を求める手続そのもの
  • 訂正明細書等の補正:既に提出した訂正明細書等の内容を修正する手続

 両者を混同すると、補正できる時期と訂正請求できる時期を取り違えてしまう。

パターンG 訂正の請求の審理手続(15肢)

 訂正の請求は、異議・無効審判の手続内で行われる。

 そのため、訂正の内容が他の当事者にどのような影響を及ぼすかという観点が重要になる。

出題例


ひっかけ① 異議申立人への意見書提出機会

 異議申立てにおいて訂正の請求がされた場合、異議申立人に意見書を提出する機会が与えられる場合がある(特120条の5第5項 参照)。

 ただし、常に例外なく意見提出機会を与えなければならないわけではない。

 例外の有無を確認しよう。

ひっかけ② 無効審判請求人への答弁書提出機会

 無効審判における訂正の請求についても、相手方である審判請求人の手続保障が問題になる(特134条3項)。

ひっかけ③ 職権審理と訂正拒絶理由

 審判官が訂正を認めないと判断する場合、訂正拒絶理由の通知(特165条)や意見書提出の機会が問題になる。

 また、審判官が職権で審理できる事項と、その場合に必要となる手続保障も整理しておこう。

パターンH 訂正の目的・対象(14肢)

 ようやく登場した、訂正制度の基本中の基本。

 訂正の4つの目的に関する問題だ。

出題例


ひっかけ① 請求項の追加は減縮になるか?

 特許請求の範囲の減縮とは、文字どおり権利範囲を狭める訂正だ。

 しかし、単に請求項の数が増えたからといって、必ずしも訂正が禁止されるわけではない。

 特に、引用関係を解消する訂正(特126条1項ただし書4号 その他)では、請求項数が増える場合もあり得る。

 大事なのは請求項の数そのものではなく、訂正の目的と実質的な内容である。

ひっかけ② 明瞭でない記載の釈明

 明瞭でない記載の釈明(特126条1項ただし書3号)も、訂正の目的として認められている。

 ただし、釈明という名目で発明の内容を実質的に変更することは許されない。「分かりやすく書き直しただけ」という説明があっても、訂正の実質を確認しよう。

 ここで、少し特殊な例を紹介したい。

 PBPクレーム(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)という、物の発明をその製造方法によって特定したクレームがある。

 このPBPクレームについては、物の構造・特性によって特定する記載への訂正だけでなく、「物の発明」から「物を製造する方法の発明」への訂正も、明瞭でない記載の釈明として認められる場合がある。

 この「PBPクレームを解消するための訂正が、明瞭でない記載の釈明として認められる得ること」については、そういうモンだとして覚えておこう。

ひっかけ③ 要約書は訂正の対象か?

 訂正の対象となるのは、特許請求の範囲、明細書又は図面である。

 要約書は含まれない。(つまり、権利化後の要約書訂正は絶対にできない)

 こうした訂正対象の違いも、基本事項として確認しておこう。

パターンI 独立特許要件(14肢)

 訂正制度の中でも、特に理解しておきたい論点がこれだ。

 独立特許要件とは、簡単にいえば、訂正後の発明について、それが独立して特許を受けられるかどうかという要件である。

 しかし、この要件が常に必要になるわけではない。

出題例


ひっかけ① 訂正審判では目的によって異なる

 特126条7項は、訂正後の発明について独立特許要件を規定している。

 ただし、訂正の目的によって適用関係が異なる。

 特に、特許請求の範囲の減縮や誤記・誤訳の訂正と、それ以外の訂正目的を区別する必要がある。

ひっかけ② 無効審判では無効審判の対象かどうかが重要

 無効審判における訂正の請求では、訂正の対象となる請求項が無効審判の請求対象となっているかどうかが重要になる。

 無効審判の対象となっている請求項について、訂正の請求における独立特許要件を、訂正審判と同じように適用するわけではない。

 ここは特134条の2第9項の準用関係を確認しておこう。

ひっかけ③ 異議申立ての場合も同様に比較する

 異議申立てにおける訂正の請求でも、異議申立ての対象となる請求項と、訂正の目的によって独立特許要件の適用関係が変わる。

 したがって、独立特許要件の問題では、次の3つを確認しよう。

  1. どの訂正手続なのか
  2. どの目的による訂正なのか
  3. 訂正する請求項が異議・無効審判の対象なのか

 この3つを確認せずに、独立特許要件の要否を判断するのは危険だ。

パターンJ 訂正の請求ができる時期(10肢)

 パターンAは訂正審判の請求時期だった。

 こちらは、異議・無効審判における「訂正の請求」の時期を問う問題だ。

出題例


ひっかけ① 無効審判での訂正請求

 無効審判では、特134条の2第1項に規定された期間内に訂正を請求できる。

 典型的なのは、答弁書提出のための指定期間内に訂正を請求する場合だ。

 しかし、それ以外にも訂正請求の機会が設けられている。

 「答弁書提出期間内だけ」と覚えてしまわないこと。

ひっかけ② 異議申立てでの訂正請求

 異議申立てでは、特120条の5第2項に基づいて訂正を請求する。

 無効審判の場合とは、訂正請求の機会が異なる。

ひっかけ③ 訂正拒絶理由通知後の対応

 訂正拒絶理由が通知された場合、その後にどのような対応が可能か。

 ここでは、新たな訂正の請求と、訂正明細書等の補正を混同しないようにしたい。

パターンK 請求項ごと・一群の請求項(8肢)

 最後は、訂正をどの単位で請求するかという問題だ。

出題例


ひっかけ① 請求項ごとの訂正

 訂正審判や訂正の請求は、一定の場合に請求項ごとに請求することができる。

 ただし、各請求項を常に完全に独立して扱えるわけではない。

ひっかけ② 一群の請求項

 ある請求項が他の請求項を引用している場合、訂正によって複数の請求項に影響が及ぶことがある。

 そのため、引用関係にある請求項については「一群の請求項」という単位が問題になる。

ひっかけ③ 明細書・図面の訂正

 明細書又は図面を訂正する場合には、その訂正が複数の請求項に関係することがある。

 そのため、特許請求の範囲の訂正とは異なる配慮が必要になる。

 ここは特126条3項・4項などの規定を確認し、請求項ごとの請求と一群の請求項の関係を整理しておこう。

訂正審判/訂正の請求の判断フロー(6ステップ)

 さて、ここまで11パターンを紹介してきた。

 結局、訂正制度の問題を解くときには、何を確認すればよいのか?

 次の6ステップで考えることをおすすめする。

STEP 1 どの手続なのか?

 まず、訂正審判なのか、異議における訂正の請求なのか、無効審判における訂正の請求なのかを確認する。

 ここを間違えると、適用条文が変わってしまう。

ちなみに、問われているのが 訂正審判/訂正の請求 のどっち? を取り違えると、論文では致命的な失点になる。(筆者注)


STEP 2 いつ行うのか?

 訂正の請求可能時期、取下げ可能時期、補正可能時期といった、時期的要件を確認する。

 特に、異議・無効審判の係属中に訂正審判を請求しようとしていないかに注意。

STEP 3 何を訂正するのか?

 訂正の目的が4種類のいずれかに該当するかを確認する。

 また、訂正の対象が特許請求の範囲、明細書又は図面に該当するかも確認する。

STEP 4 どこまで訂正できるのか?

 新規事項の追加に当たらないか。

 特許請求の範囲を実質上拡張・変更していないか。

 特に、誤記・誤訳の訂正では、基準となる書類に注意する。

STEP 5 追加要件を満たしているか?

 独立特許要件の要否を確認する。

 また、専用実施権者・質権者など、承諾が必要な者がいないかも確認する。

STEP 6 手続上の問題はないか?

 請求項ごとの請求か、一群の請求項か。

 取下げや補正は適法か。

 意見書提出機会など、必要な手続が行われているか。

 ここまで確認すれば、訂正制度に関する多くの問題を、条文に沿って整理できるはずだ。

 ちなみに、論文で訂正審判や訂正の請求、訂正の再抗弁などが出題された場合には、訂正の目的ヨシ!! 新規事項の追加でないヨシ!!、特許請求の範囲を拡張や変更に当たらないヨシ!! ……といった感じで要件をベタに全部書いていく必要がある(※)。

※正確には、”訂正が可能なときには” すべての要件を記載する必要がある。訂正できないときは、できない理由(欠いている要件)をひとつ挙げればよい。

 答練のような論文学習との並行によって理解が進みやすい領域ともいえる。


短これPLUS会員様向け・訂正関連問題 全176肢リンク

※ここに、今回分析した176肢の問題一覧を設置しました。

【短これPLUSユーザ様向け】訂正審判/訂正の請求関連問題ぜんぶリンク
【ご注意】 本記事は、『短これ』の有料版・短これPLUSのユーザ様限定記事となります。 記事の閲覧はどなた様も可能ですが、記事中のリンクから実際に問題演習を行うには、短これPLUSユーザとしてログインしている必要があります。お前も(訂正審判…

 過去問を繰り返し解いて、11大パターンを自分のものにしてほしい。

 これで訂正制度も分かりますねぇスギ!

 君にはこの称号がふさわしい 訂正の王!

 TEISEI KING !! TEISEI KING!!

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