弁理士試験の特に短答で毎年必ず出る、特29条の2(拡大先願)。苦手にしている受験生も多いことだろう。
しかし、過去31年分124問を分解した結果、出題パターンはたった10種類に収束することが分かった。本記事ではそのパターンを出題数の多い順に全解説する。
- はじめに——特29条の2は短答でも論文でも鉄板!
- 1.特29条の2とは何か
- 2.31年分131問(肢)の全体像
- 3.パターン別攻略
- パターンG 補正・削除された先願発明(9問)
- 逆パターン:新規事項追加補正
はじめに——特29条の2は短答でも論文でも鉄板!
特29条の2は……まあ、面倒くさい。
まず、条文自体が長くて、読むのに苦労する。
短答では選択肢一つ一つが異様に長くなり、読んで面倒。
そして論文では、細かい要件当てはめが必要になり、記載量が増える。書いて面倒。手が疲れるwww
これだけ面倒して苦労して、普通に正解できればいいのだが、けっこう間違えるのがもう……(遠い目)。
では、ここで問おう。
ド定番なのに、なぜ間違えてしまうのか?
その答えは……
これまでの問題集や受験機関の教材では、特29条の2に関連問題の出題パターンを網羅できていなかったからだ。
いくら特29条の2が短答・論文の両方で超重要だといっても、まさか、市販の問題集1冊に、特29条の2関連の問題だけ100問以上載せるようなことはできないわけで。
特29条の2で悩む時代は終焉へ――
だが、短これは違う(笑)。
平成7年(1995年)から令和7年(2025年)まで、31年分の短答過去問から特29条の2に関する肢をすべて収集し、総ざらいさせてもらった。
結果、出題数は131問(肢)。
そして、この131問(肢)をすべて分析した。やっちまった。
その結果、出題パターンをきれいに10種類に分類することができた。この全出題パターンをお届けしようというのが、この記事の趣旨である。
これで、特29条の2は、力技で攻略できるね!
お前も特29条の2の鬼にならないか?
……ということで以下、読み進めてほしい。
なお、前座の説明はいいのでとっとと分析記事を読みたいという方は、本編である「2.31年分131問(肢)の全体像」から読んでいただいて大丈夫だ。
1.特29条の2とは何か
詳細な条文解説は他書に任せるとして、ここでは「問題を解くのに必要な最低限」だけをおさえる。
簡単にいうと
特許法29条の2(以下「特29条の2」、いわゆる「拡大先願」)とは、特許出願の拒絶理由のひとつである。
特許制度においては、原則として出願から1年6月が経過するまで、その発明の内容は世間に公表されない(出願公開請求がされた場合には、これより早く公開される)。
この非公開期間中には、先に出願されていた(未公開の)発明と同一の発明について、別の者が独立に特許出願をしてしまうこともあり得る。
特29条の2は、このような場合に、先にされた出願書類のどこかしら(特許請求の範囲、明細書、図面、図表等)に記載されていた発明と同一の後願発明については、たとえ先願が公開される前に出願されていたとしても拒絶するという、特殊な後願排除規定である。
弁理士試験においては短答、論文のいずれにおいてもド定番。特に短答であれば、1問も出ない年はないと言っていい(※)。
※厳密には特29条の2が出題されていない年もあるにはあるが、まあ、過去32年間で「H24」ただ1度だけである。
特29条の2・発効の基本要件(5要件)
基本中の基本となるが、問題を解く上で覚えておくべき発効の要件は5つ。
↓ ↓ ↓
- 本願よりも日前の特許出願又は実用新案登録出願がある。
- 日前の出願についての公報掲載(出願公開等)が本願の後にされている。
- 本願に係る発明が、日前の出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面に記載された発明又は考案と同一である。
- 両発明(又は考案)につき、発明者又は考案者が同一でない。
- 「後願の出願時」に、その出願人と日前の出願人とが同一でない。(※ただし書)
この5要件をチェックする習慣を身につけるだけで、正答率は大きく上がる。
ぶっちゃけ上記5要件をひとつずつ当てはめ、全部満たすなら特29条の2発効。1つでも満たさないなら発効ナシ、なので。
もっとも、そんな単純な5要件の当てはめに持ち込めないよう、時系列シャッフルやギミック、ひっかけのオンパレードになっているのが、昨今の特29条の2問題なのだが……
筆者談
まあ、次章以降でそれぞれの「ひっかけ」を詳しく見ていくから、安心してほしい。
ちなみに、論文ではこの5要件を与件文に沿って当てはめしながら書けないとダメなので、あしからず。
2.31年分131問(肢)の全体像
ということで紹介していく。
まずは10大パターンと、パターンごとの問題数(肢数)からだ。
10大パターン別出題数
| パターン | 内容 | 問題数 |
|---|---|---|
| A | 出願人・発明者の同一性 | 26問 |
| B | 国内優先権(特41条3項)絡み | 22問 |
| C | 分割・変更出願 | 14問 |
| D | 先願の公開・取下げ・放棄 | 13問 |
| E | PCT国際出願(特184条の13)絡み | 13問 |
| F | 外国語書面出願(特36条の2)絡み | 11問 |
| G | 補正・削除された先願発明 | 9問 |
| H | 新規性喪失の例外・パリ優先権等 | 7問 |
| I | 実用新案絡み | 7問 |
| J | 王道・その他の特殊論点 | 9問 |
| 合計 | 131問 |
3.パターン別攻略
次に、上の10大パターンをどのように分類したか、詳細に入ろう。
パターンA 出願人・発明者の同一性(26問)
先後願の出願人または発明者が同一の場合、特29条の2の後願排除効は生じない。
試験はここを様々な角度で突いてくる。
ひっかけ① 後願出願「後」の名義変更
最頻出のひっかけがこれ(特29条の2ただし書)。
「後願の出願後」に名義変更(譲渡など)があり、先後願の出願人が同一になったというケース。
結論は発効あり(後願は拒絶)。
特29条の2ただし書における出願人同一の判断時は、後願の「出願時点」だ。「後願の出願時において」出願時に先後の出願人名義が同一でなければ、特29条の2ただし書は適用されない。
「出願後に同一になったんだから大丈夫では?」という直感を逆手に取った初歩的なひっかけである。
出題例
ひっかけ② 後願出願「時」に同一
こちらは逆のパターン。後願の出願時点ですでに先後願の出願人が同一であれば、発効なし。
特に共同出願の場合に注意が必要で、完全一致が必要とされる。先願がA・B共同出願で、後願がA単独出願という場合は同一とみなされず、発効ありとなる。
ひっかけ③ 発明者同一
出願人が異なっていても、発明者が同一であれば排除効なし。
さらに「実質的な発明者同一」が発明者同一と同様に扱われるパターンも出題されている。
このタイプの典型例は――「先の出願が、実は真の発明者のアイデアをパクってなされた冒認出願であり、出願人こそ異なるものの、先願・後願両発明の発明者は同じ」というもの。
ひっかけ④ 相続による名義変更
出願人の変更は通常、特許庁への登録が効力発生要件だが(特34条1項)、相続による名義変更は登録なしで効果が発生する(特34条4項)。
これらを組み合わせて、
「後願の出願時点ですでに相続により先後願の出願人が同一になっていた→相続なので登録なしでも名義変更は有効→特29条の2は発効なし」というパターンが出題されている。
パターンB 国内優先権(特41条3項)絡み(22問)
最も論点が多く、複雑に見えるパターン。しかし、特41条3項の中身を理解すれば怖くない。
国内優先権主張を伴う出願では通常、先の出願(以下「先の出願」)は出願から1年4ヶ月後に取下げ擬制となる(特42条1項)。で、取下げ擬制された先の出願は通常なら公開されないのだが……
国内優先権主張の基礎となった出願(先の出願)と、優先権主張を伴う後の出願の両方に記載された発明については、特41条3項に基づき、後願の出願公開時に、先の出願に記載されていたものとして公開されたものとして公開されたものとみなされる。
ひっかけ① 「特許請求の範囲」か「明細書等」か
公開擬制の対象となるのは、先の出願の「特許請求の範囲・明細書・図面等」に記載された発明だ。特許請求の範囲に記載がなくても、明細書や図面等に記載があれば足りる。
「先の出願の請求項には書いてないから発効しない」という引っ掛けに惑わされないこと。
出題例
ひっかけ② 発明が、先の出願or後の出願の片方にしか書かれていない
先の出願に係る発明が、後の出願の明細書等に記載されていない。ゆえに特41条3項の発効なし——公開擬制が生じないので特29条の2の適用もナシ、という当然の帰結を問うひっかけ。
もちろん、後の出願にしか書いていない(=上と逆。先願側に書いておらず、後の出願で新たに追加された)発明も、特41条3項の公開擬制の対象とはならない。
出題例
ひっかけ③ 累積優先(特41条2項・3項カッコ書)
後の出願だけでなく、先の出願もまた、さらに先の出願に基づく国内優先権主張を伴っていた……という場合(※これを累積優先という)、先の出願の出願日は遡及しない(特41条2項カッコ書)。
これにより、先の出願に国内優先権の効力が認められなくなるため、①本願からみて時系列上の「先願」でなくなるケースや、②先の出願の公開擬制が後願の出願公開時点で生じなくなる、といったケースが生じる。
出題例
ひっかけ④ 特29条の2の引例は「先の出願」
特41条3項の効力(公開擬制)が発生する場合、特29条の2に基づく拒絶引例(先願)として機能するのは、本願より後に出願された(他人の)出願ではなく、特42条1項に基づくみなし取下げ後に公開擬制された「先の出願」だ。
そのため、「国内優先権主張に係る後の出願が引例になる」という選択肢は、誤りとなる。
ひっかけ⑤ 国内優先権主張の基礎出願を、出願人が自主的に取り下げている
特41条3項は、国内優先権主張の基礎として出願公開前にみなし取下げ(特42条1項)された出願に記載されていた発明を、後の出願の公開時に公開されたものとみなす規定。
だが、この基礎出願が取下げ擬制ではなく、出願人によって(みなし取下げされるより前に)自主的に取り下げられていた場合、(先の出願と重複した発明を有する)後の出願が公開されても特41条3項は発効しないという、悪意強めの引っ掛け。
出題例
パターンC 分割・変更出願(11問)
出願日の遡及ルールを、特29条の2における特例として捉え直すこと。
分割出願・変更出願については、もとの出願の日にまで出願日が遡及する(特44条2項本文、特46条6項準用)。これは特許法の基本ルールだ。
ところが特29条の2の効力に関しては、特44条2項ただし書(特46条6項準用)により、分割・変更出願は「他の出願」として出願日が遡及しない。つまり、特29条の2の判断を行ううえでは、分割に係る新たな出願や変更出願の出願日は、もとの出願の日に遡及しないものとして考える……そういうことである。
この結果、分割・変更出願は出願日の遡及効果がないものとして、現実の出願日ベースで本願との先後関係を判断されることとなる。
ひっかけ① 出願日が遡及しないからといって、先後が逆転するとは限らない
ただし遡及しないとはいえ、現実の出願日(分割・変更した日)が本願(問われている対象の出願)よりも先であれば、分割・変更出願が先願として機能し、特29条の2の発効ありとなる。
「特29条の2の他の出願日としては出願日が遡及しないから、必ず先後が入れ替わる」……などと反射のように覚えていると、引っかかる。
出題例
ひっかけ② そもそも「他の出願」ではない
そもそも問題で問われている分割出願が、特29条の2における「他の出願」ではなく、本願なので、普通に出願日はもとの出願の日まで遡及するという、これまた悪意強めの引っ掛け。
論文で狙われやすい、「特29条(新規性)×特29条の2×特39条(先願)」の絡み
短答では「特29条の2に照らしてどうか」、「特39条に照らしてどうか」という1条文単位の正誤を問われることが多いが、論文では、ひとつの問題で、「特29条の2に照らせばこうだし、特39条に照らせばこうです」という形でそれぞれ説明を求められる。
そのため、論文対策として特29条の2の短答問題を演習するのであれば、その肢では問われていない特39条(あるいは特29条の2、特29条)に照らした場合、どうか? という意識を持つ必要がある。
パターンD 先願の公開・取下げ・放棄(13問)
「公開されたか否か」が唯一の分岐点。公開後は何が起きても発効する。
特29条の2の発効には先願の出願公開が必要条件だ。ここに関するひっかけはすべて「公開されたか?」という一点に帰着する。
公開「前」に消えた先願→発効なし
出願公開前に取り下げられた、または放棄された先願は、世の中に内容が知られないまま消えたわけだから、特29条の2の先願としての地位を持たない。事例に国内優先権が登場していない場合、実にシンプルな問題となる。
※ちなみに、事例に国内優先権が登場している場合はパターンB(特41条3項絡み)となる。
出題例
公開「後」に消えた先願→発効あり
出願公開後に取り下げられた、あるいは別の理由(記載不備など)で拒絶査定を受けた先願——これは特29条の2の発効あり。公開済みの事実は覆らないからだ。「先願が拒絶されたから後願は大丈夫」という誤解を突くひっかけが繰り返し出題されている。
出題例
出願公開請求後の取下げ→発効あり
出願人が出願公開の請求をした後に出願を取り下げた場合、そのまま出願公開がなされることは確定しているため、発効あり。
出願公開の請求を取り下げることはできない(特64条の2第2項)。つまり、出願公開の請求が入った以上、その後に出願人が日和って出願自体を取り下げたとしても、必ず当該出願の内容は公開されるのである。
3年経過→自動的に公開済
事例において出願から3年が経過している場合、出願公開請求の有無にかかわらず出願内容はすでに公開されている。出願公開は出願の日から1年6月経過後に行われるからである(特64条1項)。
この事実に気付いていないと、正解にたどり着けない。
パターンE PCT国際出願(特184条の13)絡み(13問)
「国際公開(PCT21条(2)(a))」か「国内公表(特184条の9第1項)」か——ここだけ押さえれば大半は解けるパターン。
PCT国際出願が特29条の2の拡大先願として機能するタイミングについて、特184条の13は明確に定めている。
ひっかけ① 特29条の2の効果は「国際公開」の時点で生じる。
外国語特許出願であっても、特29条の2の効果は国際公開(PCT21条(2)(a))の時点で発効し、その後の国内公表(特184条の9第1項)まつ待つ必要はない。ここを「国内公表によって特29条の2の効力が生じる」とする引っ掛けが頻出している。
出題例
ひっかけ② 翻訳文の提出と取下げ擬制
外国語特許出願には翻訳文の提出が必要で、未提出の場合は取下げ擬制となる。取下げ擬制された出願は国際公開されているかもしれないが、国内段階に移行していないため、特29条の2の発効なしとなる(特184条の13カッコ書)。
ただし、さらなるひっかけとして、救済規定によって翻訳文未提出からの取下げ擬制から復活した場合には、やっぱり発効あり……なんてのもある。
ひっかけ③ 出願後の却下・名義変更は無関係
先願のPCT国際出願が国際公開後に却下されても、特29条の2の効果は消えない。また後願の出願後に名義変更があっても、出願時の状態で判断するため無関係(パターンAと同じ考え方)。
パターンF 外国語書面出願(特36条の2)絡み(11問)
外国語書面出願の場合、特29条の2の拡大された先願の範囲は「原文」で決まる。翻訳文は無関係だ。
外国語書面出願の場合、特29条の2の「先願の明細書等に記載された発明」の範囲は翻訳文ではなく原文(外国語書面)の明細書・請求の範囲・図面に基づいて判断される。
したがって翻訳文に記載がなくても、原文に記載があれば発効する。「翻訳文に書いてないから発効しない??」はド定番のひっかけだ。
なお、外国語特許出願の場合、「国際出願日における国際出願の明細書・請求の範囲・図面」が基準となる。こちらも特29条の2の拡大された先願の範囲については、翻訳文ベースではなく原文ベースということだ。
出題例
パターンG 補正・削除された先願発明(9問)
一度でも特許請求の範囲・明細書等に記載された発明は、補正で消えても(特29条の2の)後願排除効を持ち続ける。
先願の補正により特許請求の範囲から発明が削除された場合でも、願書に最初に添付した明細書等に記載されていれば、特29条の2に基づく後願排除効は失われない。分割出願に伴う補正で削除された発明についても同様だ。
「補正で削除されたから先願の内容じゃなくなった」という誤解を突くひっかけが繰り返し出題されている。
出題例
逆パターン:新規事項追加補正
先願に対して、新規事項の追加となる補正がなされ、その追加部分が後願発明と同一である場合には、特29条の2に基づく後願排除効が発生しない。
出願時の明細書等に記載されていなかった新規追加事項にまで、特29条の2の拡大先願の効力を認めるわけにはいかないからだ。
パターンH 新規性喪失の例外・パリ優先権等(7問)
「特29条の2は新規性お構いなし!」という感覚を持つ。
後願が新規性喪失の例外(特30条)の適用を受けていても、特29条の2の要件判断には一切関係ない。特30条は特29条1項(新規性)・2項(進歩性)を救済するものであって、特29条の2を救済しない。「例外適用を受けているから大丈夫なのでは?」は典型的な誤解だ。
一方、パリ条約4条Bの優先権の効力(=特許要件の判断基準日の遡及)は話が別だ。一見後願に見える出願がパリ優先権により先願と同日扱いになるケースでは、先後願の関係が逆転し、発効なしとなる場合がある。
先願の出願公開後に後願が出願された場合、もはや特29条の2の問題ではない
また、先願の出願公開後に後願が出願された場合、もはや特29条の2ではなく特29条1項(新規性)の問題となる点も整理しておきたい。
パターンI 実用新案絡み(7問)
実用新案が絡む特29条の2問題は、主に以下2つの論点に分かれる。
取下げ擬制と公開機会の喪失
実用新案登録出願が特許出願に変更された場合、元の実用新案登録出願は取下げ擬制となる(特46条4項)。重要なのは、実用新案は登録後にしか公開されないという点だ(実用新案公報)。変更により取下げ擬制となった実用新案登録出願は、登録に至らず、公開される機会がないまま消える。よって特29条の2は発効しない。
取り下げられた実用新案登録出願も同様。公開の機会がないまま消えるので特29条の2は発効しない。
出題例
実用新案公報の発行は、特29条の2発効のトリガーになる
公開されたのが特許出願の出願公開ではなく実用新案公報の発行だから、特29条の2は適用されない?? ——という誤解を狙うパターン。
実用新案公報の発行による出願内容の公開も、特29条の2発効のトリガーとなる。
問題演習ばかりやっていて素の条文を読むことを怠っていると、いざ出題されたときに迷ってしまう。おそらく、そんな「問題集ばかりやって条文読んでない人」をコロす問題なのだろう。
特29条の2の条文には、出願公開だけでなく、特許掲載公報の発行や実用新案掲載公報の発行もそのトリガーとなることがちゃんと明記されているのである。
出題例
パターンJ 王道・その他の特殊論点(7問)
ひっかけのない確認問題や、知っていれば必ず取れる論点。
ひっかけなしで5要件すべてを順番に確認する「王道問題」も頻出である。要件を丁寧に一つひとつチェックする習慣があれば確実に得点できる。
もっとも、この王道パターンは、短答よりも論文で書けることが最重要だ。
論文の事例問題において特29条の2の発効を否定する場合、上で紹介した5要件のうち、満たさない要件をひとつ挙げるだけで事足りる(要件はすべて揃わないと法的効果が生じないため、否定する分には要件をひとつ潰せばよい)。
しかし、発効を肯定する場合、5要件全てを満たしていることを全部書いて論証する必要がある。
その他、以下の細かな論点も押さえておきたい。
上位概念の後願も排除される:
審査基準上、後願の発明が先願発明の上位概念であっても、両者は実質的に同一の発明だとして特29条の2が発効する。
先願の図面のみの記載でも有効:
明細書や請求の範囲に記載された発明だけでなく、図面や図表にのみ記載された発明も、特29条の2の後願排除効を持つ。
先願が冒認出願でも発効する:
先願が冒認出願(発明者でない者による出願)であっても、特29条の2はお構いなしに発効する。冒認を理由に先願の効果が消えるわけではない。※もっとも、発明者同一であれば特29条の2は発効しない。
手続補完書の提出による、先願の出願日の繰り下がり:
先願の出願書面の内容に不備があり、手続補完書の提出を行ったために出願日が繰り下がり(特38条の2第6項)、結果として先後願の順序が入れ替わったというパターン。
時系列混乱型:
甲の出願が公開前に取り下げられ、その後乙が出願し、さらにその後甲が再出願するような問題では、先後願の関係を時系列で整理しないと誤る。
4.特29条の2の判断フロー・どの問題にも使える5ステップ
問題を解くときは、以下の順番でチェックする。
STEP 1 同日出願か?
→ YESなら特29条の2の発効はなく、純粋に特39条(先願)の問題となる
STEP 2 先願は後願の出願後に出願公開されているか?
→ NOなら発効なし(ただし取下げ前に公開請求済・3年経過は要確認)
→ 後願が先願の出願公開後に行われている場合、特29条(新規性)の問題となる
STEP 3 「後願の出願時点で」先後願の出願人・発明者が同一か?
→ YESなら発効なし
(出願「後」の名義変更は無関係、共同出願は完全一致が必要)
STEP 4 先願の明細書等(原文・公開擬制含む)に後願発明の記載があるか?
→ NOなら発効なし
STEP 5 特殊事情はあるか?
→ PCT先願:国際公開で発効(国内公表不要)
→ 国内優先権:先の出願の明細書等で判断(請求項不要)
→ 分割・変更:特29条の2では出願日遡及しない
→ 外国語書面:翻訳文でなく原文で判断
まあ、ここは実を言うとAIがきれいにまとめてくれたところで、なんかキレイめに仕上がってはいるけど、こんなステップを暗記するより、実際に問題を解いて間違って、解説で「ああそうか」と学ぶ方が身には付きそうである。
特29条の2は「完全理解」あるのみ
ということで、今回のように集計したり表にまとめたりすると、必ず、「重要なところから効率よく学ぼう」「試験勉強にはコスパやタイパが大事!」みたいなコトを考える人が出てくるんだけど、最後に釘を差しておきたい。
名物「いくつあるか問題」が存在する弁理士試験、かつ、その最重要論点である「特29条の2」の理解について、タイパだのコスパだのと横着を考えてはいけない。
まあ、百歩譲って、短答がすべて択一式の問題であるのなら……上の表のうち、出題率高めな部分のみ(パターンAからE辺り)を押さえて、3問中2問も分かれば上出来といえるだろう。
択一式なら、わからない部分があっても消去法でそれなりになんとかできるので。
しかし、いくつあるか形式で出題された場合、2/3程度の理解ではまったく勝負にならない。5肢のうち4肢分かっていても、正解率は50%にしかならないのだ。それが「いくつあるか問題」である。
だからこそ、頻出を超えて「ほぼ必ず出題されてくる」 特29条の2への理解は、完璧でなければならない。
短これPLUS会員様向け・特29条の2関連問題 全肢リンク
短これPLUS会員さま限定ですが、別記事にて特29条の2・出題パターン別の全肢リンクを掲載します。
↓ ↓ ↓
【短これPLUSユーザ様向け】特29条の2・関連問題ぜんぶリンク

本記事は、弁理士試験・短答式 肢別過去問これくしょん『短これ』に収録した過去問データ(平成7年〜令和7年・全131肢)をもとに分析・分類した結果を記事としたものです。

