「常に」は常にバツなのか?

短これ総研 データ研究

 いよいよ令和8年度の弁理士試験・短答式まであと数日!

 ということで、今回は小ネタだけど本試験において即効性のあるものを。

「常に」を見たらバツにしろ……は本当?

 弁理士試験の短答を勉強していれば、一度は通説として聞いたことがあるはずだ。

  ↓  ↓  ↓

「『常に』という言葉が入っている選択肢は、バツになりやすい」

  • 講師から聞いた。
  • 先輩受験生から教わった。
  • 予備校のテキストに載っていた。
  • 短これの解説に書いてあった(手前味噌☆)

 ――そういう形でじわじわと広まってきた、いわば “受験テクニックの定説” である。

 確かに、感覚的にはわかりやすい。

 法律の世界で「例外なく・いつでも・必ず」を意味する「常に」は、出題者にとっても引っかけに使いやすい言葉だ。断言しすぎた選択肢ほど、どこかに例外があってバツになる――そういうロジックである。

 しかも、弁理士試験の科目には「条約」がある

 条約は多国間の妥協の産物として生まれたものなので、当然ながら例外事項のオンパレード。そのため長い間、特に条約に関しては「常に」を見たらバツだと思え……というぐらいに語られてきた(と思う)。

 だが、印象論のまま断じるのは危険ではないだろうか?

 そこで、短これ総研では、この通説――「常にを見たらバツと思え」が実際にどうなのか、過去問データをもとに検証してみた。

 今回は、H6(1994年)からR7(2025年)まで、32年分の短答過去問をすべて洗い出し、「常に」を含む選択肢の正誤を1件ずつ確認した。

調査の概要

調査対象:

 弁理士試験短答式試験(H6〜R7)の全選択肢

抽出条件:

 選択肢の文中に「常に」という語句を含むもの

確認内容:

 その選択肢が正解(○)か誤り(✕)か

集計結果:

項目件数
「常に」を含む選択肢の総数157問
うち正解(○)だったもの16問
正解率約10.2%

 157問中、正解はわずか16問。つまり、「常に」を含む選択肢の約90%はバツという結果になった。

年度別・出題数の推移

 なお、年度ごとに「常に」を含む選択肢がどれだけ出ていたか、整理したのが以下の表だ。

年度「常に」含む選択肢数うち○の数○の内訳
R0710
R0600
R0520
R0420
R0362特実:1、商標:1
R0200
R0140
H3010
H2910
H2851意匠:1
H2720
H2660
H2520
H2471特実:1
H2340
H2220
H2140
H2071特実:1
H1961特実:1
H1830
H1720
H1630
H1561特実:1
H1440
H1331条約:1
H1240
H1150
H10102特実:1、条約:1
H9110
H8152条約:2
H7183特実:1、商標:1、条約:1
H6111商標:1
合計15716

 この表を見てまず気づくのは、出題数の変化だろう。

 H6~H10の頃は、1年で10問~18問もの「常に」選択肢が登場していた。

 ところが H11以降、じわじわと減り始め、H17以降はほとんどの年度で5問以下、R06に至ってはゼロ。最近の試験では「常に」という言葉自体、ほとんど見かけなくなっている。

 すでに対策されているのかも知れない(笑)。

分析①:「常に=バツ」は統計的に正しいのか?

 率直に言えば、約90%がバツという数字は、戦略として使う十分な根拠になる。

 10問に1問しか正解にならないのなら、「常に」を見た瞬間にバツを疑う方が合理的なので……。単純に、ランダムに選ぶより正答率が上がるうえ、時間が限られた本番で「この選択肢は怪しい」とアタリをつけられること自体が大きなアドバンテージだといえるだろう。

 されど、1割は正解(○)なのである。

 157問中16問――決して無視できない数であり、目押しをしないと根拠のない決め打ちで切りに行くと、確実にチェリーやスイカ……もとい、得点を取りこぼすだろう。

分析②:「常に」が○になりやすい分野はあるか

 今度は、正解16問の内訳を分野別に見てみよう。

分野○の数
特許・実用新案(特実)8
条約5
商標2
意匠1

 特実と条約に○が集中している。

 商標・意匠はほとんどバツと考えて差し支えないといえる。

 特実・条約で「常に」が正解になりやすい具体的な条文・文脈については、以下で詳しく解説しよう。

「常に」が正解になる条文・文脈パターン

 「常に」を含む選択肢が○になるケースは、基本的に以下の2つである。

常に~ではない(部分否定)パターン

 「常に」というキーワードこそ使っているが、実際には部分否定というパターン。

 条件反射で「常に=バツ」としていると引っかかるパターン。

割と基本的な論点を、しっかり「断定」できるか試すパターン

 例外がない論点・規定――たとえば、

  • 意匠法における出願の分割と補正の時期的要件は全く同じであるという前提のもと、意匠法で分割ができるときには、「常に」補正が可能であるかを問う。
  • もともと例外の一切ない条文に、さらにダメ押し的に「常に」をくっつけただけの選択肢。

 ……あたりである。

 

出題者も意識している?――近年の「常に」激減の背景

 もう一つ興味深いのが、出題頻度が年々落ちていることである。

 H7〜H9の頃は毎年10〜18問の「常に」選択肢が登場していたが、H17以降は急減しており、R02・R06に至ってはゼロだ。

 考えられる理由は2つ。

 ひとつは、この “通説” が受験生に広まりすぎたこと。「常に=バツ」が定着してしまうと、根拠なく選択肢を切れてしまい、試験の意味が薄れてしまう。出題者側が意識的に使用頻度を下げた可能性が伺える。

 もうひとつは、出題形式・内容の変化だ。近年の短答試験は条文の細かい要件を問うスタイルになっており、「常に」のような副詞で引っかけるより、その反対、つまり「~できる場合がある」で問うスタイルが主流になっている

 いずれにせよ、「常に」はむかしほど頻出の出題形式ではなくなっている、というのが現実だ。

まとめ:「常に」を見たら疑え――ただし根拠を持って

 今回の調査結果をまとめておこう。

  • 「常に」を含む選択肢の正解率は約10.2%(157問中16問)
  • 約90%はバツなので、疑ってかかる姿勢は統計的に合理的
  • ただし1割は正解。反射で切ってしまうと得点を落とす
  • 特に、その成立過程からして例外だらけの条約では「常に=バツ」が成立しやすい
  • 近年は「常に」の出題数自体が激減しており、H7〜H9のような高頻度は期待できない

 短これ総研では引き続き、過去問の “定説” をデータで掘り下げていくつもりだ。


短これ|弁理士試験 短答式・肢別過去問これくしょん

 本記事は、弁理士試験・短答式 肢別過去問これくしょん『短これ』に収録した過去問データをもとに分析・作成したものです。

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