TRIPS協定

前文

 加盟国は、
 国際貿易にもたらされる歪み及び障害を軽減させることを希望し、並びに知的所有権の有効かつ十分な保護を促進し並びに知的所有権の行使のための措置及び手続自体が正当な貿易の障害とならないことを確保する必要性を考慮し、
 このため、

 に関し、新たな規則及び規律の必要性を認め、
 不正商品の国際貿易に関する原則、規則及び規律の多数国間の枠組みの必要性を認め、
 知的所有権が私権であることを認め、
 知的所有権の保護のための国内制度における基本的な開発上及び技術上の目的その他の公の政策上の目的を認め、
 後発開発途上加盟国が健全かつ存立可能な技術的基礎を創設することを可能とするために、国内における法令の実施の際の最大限の柔軟性に関するこれらの諸国の特別のニーズを認め、
 貿易関連の知的所有権に係る問題に関する紛争を多数国間の手続を通じて解決することについての約束の強化を達成することにより緊張を緩和することの重要性を強調し、
 世界貿易機関と世界知的所有権機関(この協定において「WIPO」という。)その他の関連国際機関との間の相互の協力関係を確立することを希望して、
 ここに、次のとおり協定する。

第1部 一般規定及び基本原則

 第1条 義務の性質及び範囲

 第2条 知的所有権に関する条約

 第3条 内国民待遇

 第4条 最恵国待遇

知的所有権の保護に関し、加盟国が他の国の国民に与える利益、特典、特権又は免除は、他のすべての加盟国の国民に対し即時かつ無条件に与えられる。加盟国が与える次の利益、特典、特権又は免除は、そのような義務から除外される。

 第5条 保護の取得又は維持に関する多数国間協定

第3条及び第4条の規定に基づく義務は、知的所有権の取得又は維持に関してWIPOの主催の下で締結された多数国間協定に規定する手続については、適用しない。

 第6条 消尽

この協定に係る紛争解決においては、第3条及び第4条の規定を除くほか、この協定のいかなる規定も、知的所有権の消尽に関する問題を取り扱うために用いてはならない。

 第7条 目的

知的所有権の保護及び行使は、技術的知見の創作者及び使用者の相互の利益となるような並びに社会的及び経済的福祉の向上に役立つ方法による技術革新の促進並びに技術の移転及び普及に資するべきであり、並びに権利と義務との間の均衡に資するべきである。

 第8条 原則

第2部 知的所有権の取得可能性、範囲及び使用に関する基準

第1節 著作権及び関連する権利

 第9条 ベルヌ条約との関係

 第10条 コンピュータ・プログラム及びデータの編集物

 第11条 貸与権

少なくともコンピュータ・プログラム及び映画の著作物については、加盟国は、著作者及びその承継人に対し、これらの著作物の原作品又は複製物を公衆に商業的に貸与することを許諾し又は禁止する権利を与える。映画の著作物については、加盟国は、その貸与が自国において著作者及びその承継人に与えられる排他的複製権を著しく侵害するような当該著作物の広範な複製をもたらすものでない場合には、この権利を与える義務を免除される。コンピュータ・プログラムについては、この権利を与える義務は、当該コンピュータ・プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合には、適用されない。

 第12条 保護期間

著作物(写真の著作物及び応用美術の著作物を除く。)の保護期間は、自然人の生存期間に基づき計算されない場合には、権利者の許諾を得た公表の年の終わりから少なくとも50年とする。著作物の製作から50年以内に権利者の許諾を得た公表が行われない場合には、保護期間は、その製作の年の終わりから少なくとも50年とする。

 第13条 制限及び例外

加盟国は、排他的権利の制限又は例外を著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合に限定する。

 第14条 実演家、レコード(録音物)製作者及び放送機関の保護

第2節 商標

 第15条 保護の対象

 第16条 与えられる権利

 第17条 例外

加盟国は、商標権者及び第三者の正当な利益を考慮することを条件として、商標により与えられる権利につき、記述上の用語の公正な使用等限定的な例外を定めることができる。

 第18条 保護期間

商標の最初の登録及び登録の更新の存続期間は、少なくとも7年とする。商標の登録は、何回でも更新することができるものとする。

 第19条 要件としての使用

 第20条 その他の要件

商標の商業上の使用は、他の商標との併用、特殊な形式による使用又はある事業に係る商品若しくはサービスを他の事業に係る商品若しくはサービスと識別する能力を損なわせる方法による使用等特別な要件により不当に妨げられてはならない。このことは、商品又はサービスを生産する事業を特定する商標を、その事業に係る特定の商品又はサービスを識別する商標と共に、それと結び付けることなく、使用することを要件とすることを妨げるものではない。

 第21条 使用許諾及び譲渡

加盟国は、商標の使用許諾及び譲渡に関する条件を定めることができる。もっとも、商標の強制使用許諾は認められないこと及び登録された商標の権利者は、その商標が属する事業の移転が行われるか行われないかを問わず、その商標を譲渡する権利を有することを了解する。

第3節 地理的表示

 第22条 地理的表示の保護

 第23条 ぶどう酒及び蒸留酒の地理的表示の追加的保護

 第24条 国際交渉及び例外

第4節 意匠

 第25条 保護の要件

 第26条 保護

第5節 特許

 第27条 特許の対象

 第28条 与えられる権利

 第29条 特許出願人に関する条件

 第30条 与えられる権利の例外

加盟国は、第三者の正当な利益を考慮し、特許により与えられる排他的権利について限定的な例外を定めることができる。ただし、特許の通常の実施を不当に妨げず、かつ、特許権者の正当な利益を不当に害さないことを条件とする。

 第31条 特許権者の許諾を得ていない他の使用

加盟国の国内法令により、特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)(注)を認める場合には、次の規定を尊重する。

(注)

「他の使用」とは、前条の規定に基づき認められる使用以外の使用をいう。

 第31条の2

 第32条 取消し又は消滅

特許を取り消し又は特許権を消滅させる決定については、司法上の審査の機会が与えられる。

 第33条 保護期間

保護期間は、出願日から計算して20年の期間が経過する前に終了してはならない。(注)

(注)

特許を独自に付与する制度を有していない加盟国については、保護期間を当該制度における出願日から起算することを定めることができるものと了解する。

 第34条 方法の特許の立証責任

第6節 集積回路の回路配置

 第35条 集積回路についての知的所有権に関する条約との関係

加盟国は、集積回路の回路配置(この協定において「回路配置」という。)について、集積回路についての知的所有権に関する条約の第2条から第7条まで(第6条(3)の規定を除く。)、第12条及び第16条(3)並びに次条から第38条までの規定に従って保護を定めることに合意する。

 第36条 保護の範囲

次条(1)の規定に従うことを条件として、加盟国は、保護されている回路配置、保護されている回路配置を組み込んだ集積回路又は当該集積回路を組み込んだ製品(違法に複製された回路配置が現に含まれている場合に限る。)の輸入、販売その他の商業上の目的のための頒布が権利者(注)の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を違法とする。

(注)

この節の規定において「権利者」とは、集積回路についての知的所有権に関する条約に定める「権利者」と同一の意味を有するものと了解する。

 第37条 権利者の許諾を必要としない行為

 第38条 保護期間

第7節 開示されていない情報の保護

 第39条

第8節 契約による実施許諾等における反競争的行為の規制

 第40条

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