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TRIPS協定
前文
加盟国は、
国際貿易にもたらされる歪み及び障害を軽減させることを希望し、並びに知的所有権の有効かつ十分な保護を促進し並びに知的所有権の行使のための措置及び手続自体が正当な貿易の障害とならないことを確保する必要性を考慮し、
このため、
- (a) 1994年のガット及び知的所有権に関する関連国際協定又は関連条約の基本原則の適用可能性、
- (b) 貿易関連の知的所有権の取得可能性、範囲及び使用に関する適当な基準及び原則の提供、
- (c) 国内法制の相違を考慮した貿易関連の知的所有権の行使のための効果的かつ適当な手段の提供、
- (d) 政府間の紛争を多数国間で防止し及び解決するための効果的かつ迅速な手続の提供、並びに
- (e) 交渉の成果への最大限の参加を目的とする経過措置、
に関し、新たな規則及び規律の必要性を認め、
不正商品の国際貿易に関する原則、規則及び規律の多数国間の枠組みの必要性を認め、
知的所有権が私権であることを認め、
知的所有権の保護のための国内制度における基本的な開発上及び技術上の目的その他の公の政策上の目的を認め、
後発開発途上加盟国が健全かつ存立可能な技術的基礎を創設することを可能とするために、国内における法令の実施の際の最大限の柔軟性に関するこれらの諸国の特別のニーズを認め、
貿易関連の知的所有権に係る問題に関する紛争を多数国間の手続を通じて解決することについての約束の強化を達成することにより緊張を緩和することの重要性を強調し、
世界貿易機関と世界知的所有権機関(この協定において「WIPO」という。)その他の関連国際機関との間の相互の協力関係を確立することを希望して、
ここに、次のとおり協定する。
第1部 一般規定及び基本原則
第1条 義務の性質及び範囲
- (1)
加盟国は、この協定を実施する。加盟国は、この協定の規定に反さないことを条件として、この協定において要求される保護よりも広範な保護を国内法令において実施することができるが、そのような義務を負わない。加盟国は、国内の法制及び法律上の慣行の範囲内でこの協定を実施するための適当な方法を決定することができる。
- (2) この協定の適用上、「知的所有権」とは、第2部の第1節から第7節までの規定の対象となるすべての種類の知的所有権をいう。
- (3)
加盟国は、他の加盟国の国民(注1)に対しこの協定に規定する待遇を与える。該当する知的所有権に関しては、「他の加盟国の国民」とは、世界貿易機関のすべての加盟国が1967年のパリ条約、1971年のベルヌ条約、ローマ条約又は集積回路についての知的所有権に関する条約の締約国であるとしたならばそれぞれの条約に規定する保護の適格性の基準を満たすこととなる自然人又は法人をいう(注2)。ローマ条約の第5条(3)又は第6条(2)の規定を用いる加盟国は、知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会(貿易関連知的所有権理事会)に対し、これらの規定に定めるような通告を行う。
(注1)
この協定において「国民」とは、世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域については、当該関税地域に住所を有しているか又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する自然人又は法人をいう。
(注2)
この協定において、「パリ条約」とは、工業所有権の保護に関するパリ条約をいい、「1967年のパリ条約」とは、パリ条約の1967年7月14日のストックホルム改正条約をいい、「ベルヌ条約」とは、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約をいい、「1971年のベルヌ条約」とは、ベルヌ条約の1971年7月24日のパリ改正条約をいい、「ローマ条約」とは、1961年10月26日にローマで採択された実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約をいい、「集積回路についての知的所有権に関する条約」(IPIC条約)とは、1989年5月26日にワシントンで採択された集積回路についての知的所有権に関する条約をいい、「世界貿易機関協定」とは、世界貿易機関を設立する協定をいう。
第2条 知的所有権に関する条約
- (1) 加盟国は、第2部、第3部及び第4部の規定について、1967年のパリ条約の第1条から第12条まで及び第19条の規定を遵守する。
- (2)
第1部から第4部までの規定は、パリ条約、ベルヌ条約、ローマ条約及び集積回路についての知的所有権に関する条約に基づく既存の義務であって加盟国が相互に負うことのあるものを免れさせるものではない。
第3条 内国民待遇
- (1)
各加盟国は、知的所有権の保護(注)に関し、自国民に与える待遇よりも不利でない待遇を他の加盟国の国民に与える。ただし、1967年のパリ条約、1971年のベルヌ条約、ローマ条約及び集積回路についての知的所有権に関する条約に既に規定する例外については、この限りでない。実演家、レコード製作者及び放送機関については、そのような義務は、この協定に規定する権利についてのみ適用する。ベルヌ条約第6条及びローマ条約第16条(1)(b)の規定を用いる加盟国は、貿易関連知的所有権理事会に対し、これらの規定に定めるような通告を行う。
(注)
第3条及び第4条に規定する「保護」には、知的所有権の取得可能性、取得、範囲、維持及び行使に関する事項並びにこの協定において特に取り扱われる知的所有権の使用に関する事項を含む。
- (2)
加盟国は、司法上及び行政上の手続(加盟国の管轄内における送達の住所の選定又は代理人の選任を含む。)に関し、(1)の規定に基づいて認められる例外を援用することができる。ただし、その例外がこの協定に反さない法令の遵守を確保するために必要であり、かつ、その例外の実行が貿易に対する偽装された制限とならない態様で適用される場合に限る。
第4条 最恵国待遇
知的所有権の保護に関し、加盟国が他の国の国民に与える利益、特典、特権又は免除は、他のすべての加盟国の国民に対し即時かつ無条件に与えられる。加盟国が与える次の利益、特典、特権又は免除は、そのような義務から除外される。
- (a) 一般的な性格を有し、かつ、知的所有権の保護に特に限定されない司法共助又は法の執行に関する国際協定に基づくもの
- (b) 内国民待遇ではなく他の国において与えられる待遇に基づいて待遇を与えることを認める1971年のベルヌ条約又はローマ条約の規定に従って与えられるもの
- (c) この協定に規定していない実演家、レコード製作者及び放送機関の権利に関するもの
- (d)
世界貿易機関協定の効力発生前に効力を生じた知的所有権の保護に関する国際協定に基づくもの。ただし、当該国際協定が、貿易関連知的所有権理事会に通報されること及び他の加盟国の国民に対し恣意的又は不当な差別とならないことを条件とする。
第5条 保護の取得又は維持に関する多数国間協定
第3条及び第4条の規定に基づく義務は、知的所有権の取得又は維持に関してWIPOの主催の下で締結された多数国間協定に規定する手続については、適用しない。
第6条 消尽
この協定に係る紛争解決においては、第3条及び第4条の規定を除くほか、この協定のいかなる規定も、知的所有権の消尽に関する問題を取り扱うために用いてはならない。
第7条 目的
知的所有権の保護及び行使は、技術的知見の創作者及び使用者の相互の利益となるような並びに社会的及び経済的福祉の向上に役立つ方法による技術革新の促進並びに技術の移転及び普及に資するべきであり、並びに権利と義務との間の均衡に資するべきである。
第8条 原則
- (1)
加盟国は、国内法令の制定又は改正に当たり、公衆の健康及び栄養を保護し並びに社会経済的及び技術的発展に極めて重要な分野における公共の利益を促進するために必要な措置を、これらの措置がこの協定に適合する限りにおいて、とることができる。
- (2)
加盟国は、権利者による知的所有権の濫用の防止又は貿易を不当に制限し若しくは技術の国際的移転に悪影響を及ぼす慣行の利用の防止のために必要とされる適当な措置を、これらの措置がこの協定に適合する限りにおいて、とることができる。
第2部 知的所有権の取得可能性、範囲及び使用に関する基準
第1節 著作権及び関連する権利
第9条 ベルヌ条約との関係
- (1)
加盟国は、1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。ただし、加盟国は、同条約第6条の2の規定に基づいて与えられる権利又はこれから派生する権利については、この協定に基づく権利又は義務を有さない。
- (2) 著作権の保護は、表現されたものに及ぶものとし、思想、手続、運用方法又は数学的概念自体には及んではならない。
第10条 コンピュータ・プログラム及びデータの編集物
- (1) コンピュータ・プログラム(ソース・コードのものであるかオブジェクト・コードのものであるかを問わない。)は、1971年のベルヌ条約に定める文学的著作物として保護される。
- (2)
素材の選択又は配列によって知的創作物を形成するデータその他の素材の編集物(機械で読取可能なものであるか他の形式のものであるかを問わない。)は、知的創作物として保護される。その保護は、当該データその他の素材自体には及んではならず、また、当該データその他の素材自体について存在する著作権を害するものであってはならない。
第11条 貸与権
少なくともコンピュータ・プログラム及び映画の著作物については、加盟国は、著作者及びその承継人に対し、これらの著作物の原作品又は複製物を公衆に商業的に貸与することを許諾し又は禁止する権利を与える。映画の著作物については、加盟国は、その貸与が自国において著作者及びその承継人に与えられる排他的複製権を著しく侵害するような当該著作物の広範な複製をもたらすものでない場合には、この権利を与える義務を免除される。コンピュータ・プログラムについては、この権利を与える義務は、当該コンピュータ・プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合には、適用されない。
第12条 保護期間
著作物(写真の著作物及び応用美術の著作物を除く。)の保護期間は、自然人の生存期間に基づき計算されない場合には、権利者の許諾を得た公表の年の終わりから少なくとも50年とする。著作物の製作から50年以内に権利者の許諾を得た公表が行われない場合には、保護期間は、その製作の年の終わりから少なくとも50年とする。
第13条 制限及び例外
加盟国は、排他的権利の制限又は例外を著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合に限定する。
第14条 実演家、レコード(録音物)製作者及び放送機関の保護
- (1)
レコードへの実演の固定に関し、実演家は、固定されていない実演の固定及びその固定物の複製が当該実演家の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を防止することができるものとする。実演家は、また、現に行っている実演について、無線による放送及び公衆への伝達が当該実演家の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を防止することができるものとする。
- (2) レコード製作者は、そのレコードを直接又は間接に複製することを許諾し又は禁止する権利を享有する。
- (3)
放送機関は、放送の固定、放送の固定物の複製及び放送の無線による再放送並びにテレビジョン放送の公衆への伝達が当該放送機関の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を禁止する権利を有する。加盟国は、この権利を放送機関に与えない場合には、1971年のベルヌ条約の規定に従い、放送の対象物の著作権者が前段の行為を防止することができるようにする。
- (4)
第11条の規定(コンピュータ・プログラムに係るものに限る。)は、レコード製作者及び加盟国の国内法令で定めるレコードに関する他の権利者について準用する。加盟国は、1994年4月15日においてレコードの貸与に関し権利者に対する衡平な報酬の制度を有している場合には、レコードの商業的貸与が権利者の排他的複製権の著しい侵害を生じさせていないことを条件として、当該制度を維持することができる。
- (5)
実演家及びレコード製作者に対するこの協定に基づく保護期間は、固定又は実演が行われた年の終わりから少なくとも50年とする。(3)の規定に基づいて与えられる保護期間は、放送が行われた年の終わりから少なくとも20年とする。
- (6)
(1)、(2)及び(3)の規定に基づいて与えられる権利に関し、加盟国は、ローマ条約が認める範囲内で、条件、制限、例外及び留保を定めることができる。ただし、1971年のベルヌ条約第18条の規定は、レコードに関する実演家及びレコード製作者の権利について準用する。
第2節 商標
第15条 保護の対象
- (1)
ある事業に係る商品若しくはサービスを他の事業に係る商品若しくはサービスから識別することができる標識又はその組合せは、商標とすることができるものとする。その標識、特に単語(人名を含む。)、文字、数字、図形及び色の組合せ並びにこれらの標識の組合せは、商標として登録することができるものとする。標識自体によっては関連する商品又はサービスを識別することができない場合には、加盟国は、使用によって獲得された識別性を商標の登録要件とすることができる。加盟国は、標識を視覚によって認識することができることを登録の条件として要求することができる。
- (2) (1)の規定は、加盟国が他の理由により商標の登録を拒絶することを妨げるものと解してはならない。ただし、その理由が1967年のパリ条約に反さないことを条件とする。
- (3)
加盟国は、使用を商標の登録要件とすることができる。ただし、商標の実際の使用を登録出願の条件としてはならない。出願は、意図された使用が出願日から3年の期間が満了する前に行われなかったことのみを理由として拒絶されてはならない。
- (4) 商標が出願される商品又はサービスの性質は、いかなる場合にも、その商標の登録の妨げになってはならない。
- (5)
加盟国は、登録前又は登録後速やかに商標を公告するものとし、また、登録を取り消すための請求の合理的な機会を与える。更に、加盟国は、商標の登録に対し異議を申し立てる機会を与えることができる。
第16条 与えられる権利
- (1)
登録された商標の権利者は、その承諾を得ていないすべての第三者が、当該登録された商標に係る商品又はサービスと同一又は類似の商品又はサービスについて同一又は類似の標識を商業上使用することの結果として混同を生じさせるおそれがある場合には、その使用を防止する排他的権利を有する。同一の商品又はサービスについて同一の標識を使用する場合は、混同を生じさせるおそれがある場合であると推定される。そのような排他的権利は、いかなる既得権も害するものであってはならず、また、加盟国が使用に基づいて権利を認める可能性に影響を及ぼすものであってはならない。
- (2)
1967年のパリ条約第6条の2の規定は、サービスについて準用する。加盟国は、商標が広く認識されているものであるかないかを決定するに当たっては、関連する公衆の有する当該商標についての知識(商標の普及の結果として獲得された当該加盟国における知識を含む。)を考慮する。
- (3)
1967年のパリ条約第6条の2の規定は、登録された商標に係る商品又はサービスと類似していない商品又はサービスについて準用する。ただし、当該類似していない商品又はサービスについての当該登録された商標の使用が、当該類似していない商品又はサービスと当該登録された商標の権利者との間の関連性を示唆し、かつ、当該権利者の利益が当該使用により害されるおそれがある場合に限る。
第17条 例外
加盟国は、商標権者及び第三者の正当な利益を考慮することを条件として、商標により与えられる権利につき、記述上の用語の公正な使用等限定的な例外を定めることができる。
第18条 保護期間
商標の最初の登録及び登録の更新の存続期間は、少なくとも7年とする。商標の登録は、何回でも更新することができるものとする。
第19条 要件としての使用
- (1)
登録を維持するために使用が要件とされる場合には、登録は、少なくとも3年間継続して使用しなかった後においてのみ、取り消すことができる。ただし、商標権者が、その使用に対する障害の存在に基づく正当な理由を示す場合は、この限りでない。商標権者の意思にかかわりなく生じる状況であって、商標によって保護されている商品又はサービスについての輸入制限又は政府の課する他の要件等商標の使用に対する障害となるものは、使用しなかったことの正当な理由として認められる。
- (2) 他の者による商標の使用が商標権者の管理の下にある場合には、当該使用は、登録を維持するための商標の使用として認められる。
第20条 その他の要件
商標の商業上の使用は、他の商標との併用、特殊な形式による使用又はある事業に係る商品若しくはサービスを他の事業に係る商品若しくはサービスと識別する能力を損なわせる方法による使用等特別な要件により不当に妨げられてはならない。このことは、商品又はサービスを生産する事業を特定する商標を、その事業に係る特定の商品又はサービスを識別する商標と共に、それと結び付けることなく、使用することを要件とすることを妨げるものではない。
第21条 使用許諾及び譲渡
加盟国は、商標の使用許諾及び譲渡に関する条件を定めることができる。もっとも、商標の強制使用許諾は認められないこと及び登録された商標の権利者は、その商標が属する事業の移転が行われるか行われないかを問わず、その商標を譲渡する権利を有することを了解する。
第22条 地理的表示の保護
- (1)
この協定の適用上、「地理的表示」とは、ある商品に関し、その確立した品質、社会的評価その他の特性が当該商品の地理的原産地に主として帰せられる場合において、当該商品が加盟国の領域又はその領域内の地域若しくは地方を原産地とするものであることを特定する表示をいう。
- (2) 地理的表示に関して、加盟国は、利害関係を有する者に対し次の行為を防止するための法的手段を確保する。
- (a)
商品の特定又は提示において、当該商品の地理的原産地について公衆を誤認させるような方法で、当該商品が真正の原産地以外の地理的区域を原産地とするものであることを表示し又は示唆する手段の使用
- (b) 1967年のパリ条約第10条の2に規定する不正競争行為を構成する使用
- (3)
加盟国は、職権により(国内法令により認められる場合に限る。)又は利害関係を有する者の申立てにより、地理的表示を含むか又は地理的表示から構成される商標の登録であって、当該地理的表示に係る領域を原産地としない商品についてのものを拒絶し又は無効とする。ただし、当該加盟国において当該商品に係る商標中に当該地理的表示を使用することが、真正の原産地について公衆を誤認させるような場合に限る。
- (4)
(1)、(2)及び(3)の規定に基づく保護は、地理的表示であって、商品の原産地である領域、地域又は地方を真正に示すが、当該商品が他の領域を原産地とするものであると公衆に誤解させて示すものについて適用することができるものとする。
第23条 ぶどう酒及び蒸留酒の地理的表示の追加的保護
- (1)
加盟国は、利害関係を有する者に対し、真正の原産地が表示される場合又は地理的表示が翻訳された上で使用される場合若しくは「種類(kind)」、「型(type)」、「様式(style)」、「模造品(imitation)」等の表現を伴う場合においても、ぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示が当該地理的表示によって表示されている場所を原産地としないぶどう酒又は蒸留酒に使用されることを防止するための法的手段を確保する。(注)
(注)
加盟国は、これらの法的手段を確保する義務に関し、第42条第1段の規定にかかわらず、民事上の司法手続に代えて行政上の措置による実施を確保することができる。
- (2)
1のぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示を含むか又は特定する地理的表示から構成される商標の登録であって、当該1のぶどう酒又は蒸留酒と原産地を異にするぶどう酒又は蒸留酒についてのものは、職権により(加盟国の国内法令により認められる場合に限る。)又は利害関係を有する者の申立てにより、拒絶し又は無効とする。
- (3)
2以上のぶどう酒の地理的表示が同一の表示である場合には、第22条(4)の規定に従うことを条件として、それぞれの地理的表示に保護を与える。各加盟国は、関係生産者の衡平な待遇及び消費者による誤認防止の確保の必要性を考慮し、同一である地理的表示が相互に区別されるような実際的条件を定める。
- (4)
ぶどう酒の地理的表示の保護を促進するため、ぶどう酒の地理的表示の通報及び登録に関する多数国間の制度であって、当該制度に参加する加盟国において保護されるぶどう酒の地理的表示を対象とするものの設立について、貿易関連知的所有権理事会において交渉を行う。
第24条 国際交渉及び例外
- (1)
加盟国は、第23条の規定に基づく個々の地理的表示の保護の強化を目的とした交渉を行うことを合意する。(4)から(8)までの規定は、加盟国が交渉の実施又は2国間若しくは多数国間協定の締結を拒否するために用いてはならない。このような交渉において、加盟国は、当該交渉の対象となった使用に係る個々の地理的表示についてこれらの規定が継続して適用されることを考慮する意思を有するものとする。
- (2)
貿易関連知的所有権理事会は、この節の規定の実施について検討する。1回目の検討は、世界貿易機関協定の効力発生の日から2年以内に行う。これらの規定に基づく義務の遵守に影響を及ぼすいかなる事項についても、同理事会の注意を喚起することができる。同理事会は、加盟国の要請に基づき、関係加盟国による2国間又は複数国間の協議により満足すべき解決が得られなかった事項について加盟国と協議を行う。同理事会は、この節の規定の実施を容易にし及びこの節に定める目的を達成するために合意される行動をとる。
- (3) この節の規定の実施に当たり、加盟国は、世界貿易機関協定の効力発生の日の直前に当該加盟国が与えていた地理的表示の保護を減じてはならない。
- (4)
加盟国の国民又は居住者が、ぶどう酒又は蒸留酒を特定する他の加盟国の特定の地理的表示を、(a)1994年4月15日前の少なくとも10年間又は(b)同日前に善意で、当該加盟国の領域内においてある商品又はサービスについて継続して使用してきた場合には、この節のいかなる規定も、当該加盟国に対し、当該国民又は居住者が当該地理的表示を同一の又は関連する商品又はサービスについて継続してかつ同様に使用することを防止することを要求するものではない。
- (5)
次のいずれかの日の前に、商標が善意に出願され若しくは登録された場合又は商標の権利が善意の使用によって取得された場合には、この節の規定を実施するためにとられる措置は、これらの商標が地理的表示と同一又は類似であることを理由として、これらの商標の登録の適格性若しくは有効性又はこれらの商標を使用する権利を害するものであってはならない。
- (a) 第6部に定めるところに従い、加盟国においてこの節の規定を適用する日
- (b) 当該地理的表示がその原産国において保護される日
- (6)
この節のいかなる規定も、加盟国に対し、商品又はサービスについての他の加盟国の地理的表示であって、該当する表示が当該商品又はサービスの一般名称として日常の言語の中で自国の領域において通例として用いられている用語と同一であるものについて、この規定の適用を要求するものではない。この節のいかなる規定も、加盟国に対し、ぶどう生産物についての他の加盟国の地理的表示であって、該当する表示が世界貿易機関協定の効力発生の日に自国の領域に存在するぶどうの品種の通例として用いられている名称と同一であるものについて、この規定の適用を要求するものではない。
- (7)
加盟国は、商標の使用又は登録に関してこの節の規定に基づいてされる申立てが、保護されている地理的表示の不当な使用が自国において一般的に知られるようになった日の後又は、当該日よりも登録の日が早い場合には、商標が当該登録の日までに公告されることを条件として、当該登録の日の後5年以内にされなければならないことを定めることができる。ただし、当該地理的表示の使用又は登録が悪意で行われたものでないことを条件とする。
- (8)
この節の規定は、自己の氏名若しくは名称又は事業の前任者の氏名若しくは名称が公衆を誤認させるように用いられる場合を除くほか、これらの氏名又は名称を商業上使用する者の権利にいかなる影響も及ぼすものではない。
- (9) 加盟国は、原産国において保護されていない若しくは保護が終了した地理的表示又は当該原産国において使用されなくなった地理的表示を保護する義務をこの協定に基づいて負わない。
第4節 意匠
第25条 保護の要件
- (1)
加盟国は、独自に創作された新規性又は独創性のある意匠の保護について定める。加盟国は、意匠が既知の意匠又は既知の意匠の主要な要素の組合せと著しく異なるものでない場合には、当該意匠を新規性又は独創性のある意匠でないものとすることを定めることができる。加盟国は、主として技術的又は機能的考慮により特定される意匠については、このような保護が及んではならないことを定めることができる。
- (2)
加盟国は、繊維の意匠の保護を確保するための要件、特に、費用、審査又は公告に関する要件が保護を求め又は取得する機会を不当に害さないことを確保する。加盟国は、意匠法又は著作権法によりそのような義務を履行することができる。
第26条 保護
- (1)
保護されている意匠の権利者は、その承諾を得ていない第三者が、保護されている意匠の複製又は実質的に複製である意匠を用いており又は含んでいる製品を商業上の目的で製造し、販売し又は輸入することを防止する権利を有する。
- (2)
加盟国は、第三者の正当な利益を考慮し、意匠の保護について限定的な例外を定めることができる。ただし、保護されている意匠の通常の実施を不当に妨げず、かつ、保護されている意匠の権利者の正当な利益を不当に害さないことを条件とする。
- (3) 保護期間は、少なくとも10年とする。
第5節 特許
第27条 特許の対象
- (1)
(2)及び(3)の規定に従うことを条件として、特許は、新規性、進歩性及び産業上の利用可能性(注)のあるすべての技術分野の発明(物であるか方法であるかを問わない。)について与えられる。第65条(4)、第70条(8)及びこの条の(3)の規定に従うことを条件として、発明地及び技術分野並びに物が輸入されたものであるか国内で生産されたものであるかについて差別することなく、特許が与えられ、及び特許権が享受される。
(注)
この条の規定の適用上、加盟国は、「進歩性」及び「産業上の利用可能性」の用語を、それぞれ「自明のものではないこと」及び「有用性」と同一の意義を有するとみなすことができる。
- (2)
加盟国は、公の秩序又は善良の風俗を守ること(人、動物若しくは植物の生命若しくは健康を保護し又は環境に対する重大な損害を回避することを含む。)を目的として、商業的な実施を自国の領域内において防止する必要がある発明を特許の対象から除外することができる。ただし、その除外が、単に当該加盟国の国内法令によって当該実施が禁止されていることを理由として行われたものでないことを条件とする。
- (3) 加盟国は、また、次のものを特許の対象から除外することができる。
- (a) 人又は動物の治療のための診断方法、治療方法及び外科的方法
- (b)
微生物以外の動植物並びに非生物学的方法及び微生物学的方法以外の動植物の生産のための本質的に生物学的な方法。ただし、加盟国は、特許若しくは効果的な特別の制度又はこれらの組合せによって植物の品種の保護を定める。この(b)の規定は、世界貿易機関協定の効力発生の日から4年後に検討されるものとする。
第28条 与えられる権利
- (1) 特許は、特許権者に次の排他的権利を与える。
- (a) 特許の対象が物である場合には、特許権者の承諾を得ていない第三者による当該物の生産、使用、販売の申出若しくは販売又はこれらを目的とする輸入を防止する権利(注)
(注)
輸入を防止する権利は、物品の使用、販売、輸入その他の頒布に関してこの協定に基づいて与えられる他のすべての権利と同様に第6条の規定に従う。
- (b)
特許の対象が方法である場合には、特許権者の承諾を得ていない第三者による当該方法の使用を防止し及び当該方法により少なくとも直接的に得られた物の使用、販売の申出若しくは販売又はこれらを目的とする輸入を防止する権利
- (2) 特許権者は、また、特許を譲渡し又は承継により移転する権利及び実施許諾契約を締結する権利を有する。
第29条 特許出願人に関する条件
- (1)
加盟国は、特許出願人に対し、その発明をその技術分野の専門家が実施することができる程度に明確かつ十分に開示することを要求する。加盟国は、特許出願人に対し、出願日又は、優先権が主張される場合には、当該優先権に係る出願の日において、発明者が知っている当該発明を実施するための最良の形態を示すことを要求することができる。
- (2) 加盟国は、特許出願人に対し、外国における出願及び特許の付与に関する情報を提供することを要求することができる。
第30条 与えられる権利の例外
加盟国は、第三者の正当な利益を考慮し、特許により与えられる排他的権利について限定的な例外を定めることができる。ただし、特許の通常の実施を不当に妨げず、かつ、特許権者の正当な利益を不当に害さないことを条件とする。
第31条 特許権者の許諾を得ていない他の使用
加盟国の国内法令により、特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)(注)を認める場合には、次の規定を尊重する。
(注)
「他の使用」とは、前条の規定に基づき認められる使用以外の使用をいう。
- (a) 他の使用は、その個々の当否に基づいて許諾を検討する。
- (b)
他の使用は、他の使用に先立ち、使用者となろうとする者が合理的な商業上の条件の下で特許権者から許諾を得る努力を行って、合理的な期間内にその努力が成功しなかった場合に限り、認めることができる。加盟国は、国家緊急事態その他の極度の緊急事態の場合又は公的な非商業的使用の場合には、そのような要件を免除することができる。ただし、国家緊急事態その他の極度の緊急事態を理由として免除する場合には、特許権者は、合理的に実行可能な限り速やかに通知を受ける。公的な非商業的使用を理由として免除する場合において、政府又は契約者が、特許の調査を行うことなく、政府により又は政府のために有効な特許が使用されていること又は使用されるであろうことを知っており又は知ることができる明らかな理由を有するときは、特許権者は、速やかに通知を受ける。
- (c)
他の使用の範囲及び期間は、許諾された目的に対応して限定される。半導体技術に係る特許については、他の使用は、公的な非商業的目的のため又は司法上若しくは行政上の手続の結果反競争的と決定された行為を是正する目的のために限られる。
- (d) 他の使用は、非排他的なものとする。
- (e) 他の使用は、当該他の使用を享受する企業又は営業の一部と共に譲渡する場合を除くほか、譲渡することができない。
- (f) 他の使用は、主として当該他の使用を許諾する加盟国の国内市場への供給のために許諾される。
- (g)
他の使用の許諾は、その許諾をもたらした状況が存在しなくなり、かつ、その状況が再発しそうにない場合には、当該他の使用の許諾を得た者の正当な利益を適切に保護することを条件として、取り消すことができるものとする。権限のある当局は、理由のある申立てに基づき、その状況が継続して存在するかしないかについて検討する権限を有する。
- (h) 許諾の経済的価値を考慮し、特許権者は、個々の場合における状況に応じ適当な報酬を受ける。
- (i) 他の使用の許諾に関する決定の法的な有効性は、加盟国において司法上の審査又は他の独立の審査(別個の上級機関によるものに限る。)に服する。
- (j) 他の使用について提供される報酬に関する決定は、加盟国において司法上の審査又は他の独立の審査(別個の上級機関によるものに限る。)に服する。
- (k)
加盟国は、司法上又は行政上の手続の結果反競争的と決定された行為を是正する目的のために他の使用が許諾される場合には、(b)及び(f)に定める条件を適用する義務を負わない。この場合には、報酬額の決定に当たり、反競争的な行為を是正する必要性を考慮することができる。権限のある当局は、その許諾をもたらした状況が再発するおそれがある場合には、許諾の取消しを拒絶する権限を有する。
- (l)
他の特許(次の(i)から(iii)までの規定において「第1特許」という。)を侵害することなしには実施することができない特許(これらの規定において「第2特許」という。)の実施を可能にするために他の使用が許諾される場合には、次の追加的条件を適用する。
- (i) 第2特許に係る発明には、第1特許に係る発明との関係において相当の経済的重要性を有する重要な技術の進歩を含む。
- (ii) 第1特許権者は、合理的な条件で第2特許に係る発明を使用する相互実施許諾を得る権利を有する。
- (iii) 第1特許について許諾された使用は、第2特許と共に譲渡する場合を除くほか、譲渡することができない。
第31条の2
- (1)
前条(f)に規定する輸出加盟国の義務は、この協定の附属書の(2)に定める条件に従い、医薬品を生産し、及びそれを輸入する資格を有する加盟国に輸出するために必要な範囲において当該輸出加盟国が与える強制実施許諾については、適用しない。
- (2)
この条及びこの協定の附属書に規定する制度の下で輸出加盟国が強制実施許諾を与える場合には、当該輸出加盟国において許諾されている使用が輸入する資格を有する加盟国にとって有する経済的価値を考慮して、当該輸出加盟国において前条(h)の規定に基づく適当な報酬が支払われる。輸入する資格を有する加盟国において同一の医薬品について強制実施許諾を与える場合には、同条(h)に規定する当該輸入する資格を有する加盟国の義務は、輸出加盟国において前段の規定に従って報酬が支払われる当該医薬品については、適用しない。
- (3)
医薬品の購買力を高め、及びその現地生産を促進するために規模の経済を活用することを目的として、開発途上国又は後発開発途上国である世界貿易機関の加盟国が、1994年のガット第24条及び異なるかつ一層有利な待遇、相互主義及び開発途上国の一層完全な参加に関する1979年11月28日付けの決定(文書番号L/4903)に規定する地域貿易協定であって、その締約国の少なくとも半数が国際連合の後発開発途上国の一覧表に現に記載されている国から成るものの締約国である場合には、前条(f)に規定する当該加盟国の義務は、当該加盟国における強制実施許諾に基づいて生産し、又は輸入した医薬品を、関係する健康に関する問題を共有する当該地域貿易協定の他の開発途上締約国又は後発開発途上締約国の市場に輸出することができるようにするために必要な範囲においては、適用しない。このことは、関係する特許権の属地的な性格に影響を及ぼすものではないと了解する。
- (4) 加盟国は、この条及びこの協定の附属書の規定に従ってとられる措置に対し、1994年のガット第23条(1)(b)及び(c)の規定に基づいて異議を申し立ててはならない。
- (5)
この条及びこの協定の附属書の規定は、加盟国がこの協定の規定(前条(f)及び(h)の規定を除く。)に基づいて有する権利、義務及び柔軟性(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定及び公衆の健康に関する宣言(文書番号WT/MIN(01)/DEC/2)において再確認されたものを含む。)並びにそれらの解釈に影響を及ぼすものではない。この条及びこの協定の附属書の規定は、強制実施許諾に基づいて生産される医薬品を前条(f)の規定に基づいて輸出することができる範囲に影響を及ぼすものではない。
第32条 取消し又は消滅
特許を取り消し又は特許権を消滅させる決定については、司法上の審査の機会が与えられる。
第33条 保護期間
保護期間は、出願日から計算して20年の期間が経過する前に終了してはならない。(注)
(注)
特許を独自に付与する制度を有していない加盟国については、保護期間を当該制度における出願日から起算することを定めることができるものと了解する。
第34条 方法の特許の立証責任
- (1)
第28条(1)(b)に規定する特許権者の権利の侵害に関する民事上の手続において、特許の対象が物を得るための方法である場合には、司法当局は、被申立人に対し、同一の物を得る方法が特許を受けた方法と異なることを立証することを命じる権限を有する。このため、加盟国は、少なくとも次のいずれかの場合には、特許権者の承諾を得ないで生産された同一の物について、反証のない限り、特許を受けた方法によって得られたものと推定することを定める。
- (a) 特許を受けた方法によって得られた物が新規性のあるものである場合
- (b) 同一の物が特許を受けた方法によって生産された相当の可能性があり、かつ、特許権者が妥当な努力により実際に使用された方法を確定できなかった場合
- (2) 加盟国は、(1)の(a)又は(b)のいずれかに定める条件が満たされる場合に限り、侵害したと申し立てられた者に対し(1)に規定する立証責任を課することを定めることができる。
(3) 反証の提示においては、製造上及び営業上の秘密の保護に関する被申立人の正当な利益を考慮する。
第6節 集積回路の回路配置
第35条 集積回路についての知的所有権に関する条約との関係
加盟国は、集積回路の回路配置(この協定において「回路配置」という。)について、集積回路についての知的所有権に関する条約の第2条から第7条まで(第6条(3)の規定を除く。)、第12条及び第16条(3)並びに次条から第38条までの規定に従って保護を定めることに合意する。
第36条 保護の範囲
次条(1)の規定に従うことを条件として、加盟国は、保護されている回路配置、保護されている回路配置を組み込んだ集積回路又は当該集積回路を組み込んだ製品(違法に複製された回路配置が現に含まれている場合に限る。)の輸入、販売その他の商業上の目的のための頒布が権利者(注)の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を違法とする。
(注)
この節の規定において「権利者」とは、集積回路についての知的所有権に関する条約に定める「権利者」と同一の意味を有するものと了解する。
第37条 権利者の許諾を必要としない行為
- (1)
前条の規定にかかわらず、加盟国は、同条に規定するいずれかの行為を行い又は命じる者が、違法に複製された回路配置を組み込んだ集積回路又は当該集積回路を組み込んだ製品を取得した時において、当該集積回路又は当該製品が違法に複製された回路配置を組み込んでいたことを知らず、かつ、知ることができる合理的な理由を有さなかった場合には、当該集積回路又は当該製品に関する当該行為の遂行を違法としてはならない。加盟国は、当該者が、回路配置が違法に複製されたものであることを十分に説明する通知を受領した後も手持ちの又はその受領以前に注文された在庫について当該行為を行うことができること及び、この場合において、当該回路配置について自由に交渉された利用許諾契約に基づいて支払われる合理的な利用料と同等の金額を権利者に支払わなければならないことを定める。
- (2) 第31条(a)から(k)までに定める条件は、回路配置の強制利用許諾又は権利者の許諾を得ない政府による又は政府のための使用の場合について準用する。
第38条 保護期間
- (1) 保護の条件として登録を要求する加盟国においては、回路配置の保護期間は、登録出願の日又は世界における最初の商業的利用の日から10年の期間の満了する前に終了してはならない。
- (2) 保護の条件として登録を要求しない加盟国においては、回路配置の保護期間は、世界における最初の商業的利用の日から少なくとも10年とする。
- (3) (1)及び(2)の規定にかかわらず、加盟国は、回路配置の創作後15年で保護が消滅することを定めることができる。
第7節 開示されていない情報の保護
第39条
- (1)
1967年のパリ条約第10条の2に規定する不正競争からの有効な保護を確保するために、加盟国は、開示されていない情報を(2)の規定に従って保護し、及び政府又は政府機関に提出されるデータを(3)の規定に従って保護する。
- (2)
自然人又は法人は、合法的に自己の管理する情報が次の(a)から(c)までの規定に該当する場合には、公正な商慣習に反する方法(注)により自己の承諾を得ないで他の者が当該情報を開示し、取得し又は使用することを防止することができるものとする。
(注)
この(2)の規定の適用上、「公正な商慣習に反する方法」とは、少なくとも契約違反、信義則違反、違反の教唆等の行為をいい、情報の取得の際にこれらの行為があったことを知っているか又は知らないことについて重大な過失がある第三者による開示されていない当該情報の取得を含む。
- (a)
当該情報が一体として又はその構成要素の正確な配列及び組立てとして、当該情報に類する情報を通常扱う集団に属する者に一般的に知られておらず又は容易に知ることができないという意味において秘密であること
- (b) 秘密であることにより商業的価値があること
- (c) 当該情報を合法的に管理する者により、当該情報を秘密として保持するための、状況に応じた合理的な措置がとられていること
- (3)
加盟国は、新規性のある化学物質を利用する医薬品又は農業用の化学品の販売の承認の条件として、作成のために相当の努力を必要とする開示されていない試験データその他のデータの提出を要求する場合には、不公正な商業的使用から当該データを保護する。更に、加盟国は、公衆の保護に必要な場合又は不公正な商業的使用から当該データが保護されることを確保するための措置がとられる場合を除くほか、開示されることから当該データを保護する。
第8節 契約による実施許諾等における反競争的行為の規制
第40条
- (1) 加盟国は、知的所有権に関する実施許諾等における行為又は条件であって競争制限的なものが貿易に悪影響を及ぼし又は技術の移転及び普及を妨げる可能性のあることを合意する。
- (2)
この協定のいかなる規定も、加盟国が、実施許諾等における行為又は条件であって、特定の場合において、関連する市場における競争に悪影響を及ぼすような知的所有権の濫用となることのあるものを自国の国内法令において特定することを妨げるものではない。このため、加盟国は、自国の関連法令を考慮して、このような行為又は条件(例えば、排他的なグラント・バック条件、有効性の不争条件及び強制的な一括実施許諾等を含むことができる。)を防止し又は規制するため、この協定の他の規定に適合する適当な措置をとることができる。
- (3)
加盟国は、当該加盟国の国民又は居住者である知的所有権の保有者がこの節の規定の対象とする事項に関する他の加盟国の法令に違反する行為を行っていると信じる理由を有している当該他の加盟国が、当該法令の遵守を確保することを望む場合には、要請に応じ、当該他の加盟国と協議を行う。この場合において、いずれの加盟国も、自国の法令に基づく措置をとり及び完全に自由に最終決定を行うことを妨げられない。要請を受けた加盟国は、要請を行った加盟国との協議に対し、十分かつ好意的な考慮を払い、適当な機会を与える。当該要請を受けた加盟国は、国内法令に従うこと及び当該要請を行った加盟国による秘密の保護についての相互に満足すべき合意がされることを条件として、当該事実に関連する公に入手可能な秘密でない情報その他当該要請を受けた加盟国により入手可能な情報を提供することにより協力する。
- (4)
加盟国は、自国の国民又は居住者がこの節の規定の対象とする事項に関する他の加盟国の法令に違反すると申し立てられて手続に服している場合には、要請に基づき、(3)に定める条件と同一の条件に基づいて当該他の加盟国と協議を行う機会を与えられる。