TRIPS協定

第3部 知的所有権の行使

第1節 一般的義務

 第41条

第2節 民事上及び行政上の手続及び救済措置

 第42条 公正かつ公平な手続

加盟国は、この協定が対象とする知的所有権の行使に関し、民事上の司法手続を権利者(注)に提供する。被申立人は、十分に詳細な内容(主張の根拠を含む。)を含む書面による通知を適時に受ける権利を有する。当事者は、独立の弁護人を代理人とすることが認められるものとし、また、手続においては、義務的な出頭に関して過度に重い要件を課してはならない。手続の当事者は、その主張を裏付けること及びすべての関連する証拠を提出することについての正当な権利を有する。手続においては、現行の憲法上の要請に反さない限り、秘密の情報を特定し、かつ、保護するための手段を提供する。
(注)

この部の規定の適用上、「権利者」には、権利を主張する法的地位を有する連合及び団体を含む。

 第43条 証拠

 第44条 差止命令

 第45条 損害賠償

 第46条 他の救済措置

侵害を効果的に抑止するため、司法当局は、侵害していると認めた物品を、権利者に損害を与えないような態様でいかなる補償もなく流通経路から排除し又は、現行の憲法上の要請に反さない限り、廃棄することを命じる権限を有する。司法当局は、また、侵害物品の生産のために主として使用される材料及び道具を、追加の侵害の危険を最小とするような態様でいかなる補償もなく流通経路から排除することを命じる権限を有する。このような申立てを検討する場合には、侵害の重大さと命ぜられる救済措置との間の均衡の必要性及び第三者の利益を考慮する。不正商標商品については、例外的な場合を除くほか、違法に付された商標の単なる除去により流通経路への商品の流入を認めることはできない。

 第47条 情報に関する権利

加盟国は、司法当局が、侵害の重大さとの均衡を失しない限度で、侵害者に対し、侵害物品又は侵害サービスの生産又は流通に関与した第三者を特定する事項及び侵害物品又は侵害サービスの流通経路を権利者に通報するよう命じる権限を有することを定めることができる。

 第48条 被申立人に対する賠償

 第49条 行政上の手続

民事上の救済措置が本案についての行政上の手続の結果として命ぜられる場合には、その手続は、この節に定める原則と実質的に同等の原則に従う。

第3節 暫定措置

 第50条

第4節 国境措置に関する特別の要件(注)

(注)

加盟国は、関税同盟を構成する他の加盟国との国境を越える物品の移動に関するすべての管理を実質的に廃止している場合には、その国境においてこの節の規定を適用することを要求されない。

 第51条 税関当局による物品の解放の停止

加盟国は、この節の規定に従い、不正商標商品又は著作権侵害物品(注1)が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が、これらの物品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう、行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続(注2)を採用する。加盟国は、この節の要件を満たす場合には、知的所有権のその他の侵害を伴う物品に関してこのような申立てを可能とすることができる。加盟国は、自国の領域から輸出されようとしている侵害物品の税関当局による解放の停止についても同様の手続を定めることができる。

(注1)

この協定の適用上、

(注2)
権利者によって若しくはその承諾を得て他の国の市場に提供された物品の輸入又は通過中の物品については、この手続を適用する義務は生じないと了解する。

 第52条 申立て

前条の規定に基づく手続を開始する権利者は、輸入国の法令上、当該権利者の知的所有権の侵害の事実があることを権限のある当局が一応確認するに足りる適切な証拠を提出し、及び税関当局が容易に識別することができるよう物品に関する十分詳細な記述を提出することが要求される。権限のある当局は、申立てを受理したかしなかったか及び、権限のある当局によって決定される場合には、税関当局が措置をとる期間について、合理的な期間内に申立人に通知する。

 第53条 担保又は同等の保証

 第54条 物品の解放の停止の通知

輸入者及び申立人は、第51条の規定による物品の解放の停止について速やかに通知を受ける。

 第55条 物品の解放の停止の期間

申立人が物品の解放の停止の通知の送達を受けてから10執務日(適当な場合には、この期間は、10執務日延長することができる。)を超えない期間内に、税関当局が、本案についての決定に至る手続が被申立人以外の当事者により開始されたこと又は正当に権限を有する当局が物品の解放の停止を延長する暫定措置をとったことについて通報されなかった場合には、当該物品は、解放される。ただし、輸入又は輸出のための他のすべての条件が満たされている場合に限る。本案についての決定に至る手続が開始された場合には、合理的な期間内に、解放の停止を変更するか若しくは取り消すか又は確認するかの決定について、被申立人の申立てに基づき意見を述べる機会の与えられる審査を行う。第1段から第3段までの規定にかかわらず、暫定的な司法上の措置に従って物品の解放の停止が行われ又は継続される場合には、第50条(6)の規定を適用する。

 第56条 物品の輸入者及び所有者に対する賠償

関係当局は、物品の不法な留置又は第55条の規定に従って解放された物品の留置によって生じた損害につき、申立人に対し、物品の輸入者、荷受人及び所有者に適当な賠償を支払うよう命じる権限を有する。

 第57条 点検及び情報に関する権利

秘密の情報の保護を害することなく、加盟国は、権限のある当局に対し、権利者が自己の主張を裏付けるために税関当局により留置された物品を点検するための十分な機会を与える権限を付与する。当該権限のある当局は、輸入者に対しても当該物品の点検のための同等の機会を与える権限を有する。本案についての肯定的な決定が行われた場合には、加盟国は、権限のある当局に対し、当該物品の荷送人、輸入者及び荷受人の名称及び住所並びに当該物品の数量を権利者に通報する権限を付与することができる。

 第58条 職権による行為

加盟国において、権限のある当局が、ある物品について知的所有権が侵害されていることを伺わせる証拠を得た際に職権により行動して当該物品の解放を停止する制度がある場合には、

 第59条 救済措置

権利者の他の請求権を害することなく及び司法当局による審査を求める被申立人の権利に服することを条件として、権限のある当局は、第46条に規定する原則に従って侵害物品の廃棄又は処分を命じる権限を有する。不正商標商品については、例外的な場合を除くほか、当該権限のある当局は、変更のない状態で侵害商品の積戻しを許容し又は異なる税関手続に委ねてはならない。

 第60条 少量の輸入

加盟国は、旅行者の手荷物に含まれ又は小型貨物で送られる少量の非商業的な性質の物品については、上述の規定の適用から除外することができる。

第5節 刑事上の手続

 第61条

加盟国は、少なくとも故意による商業的規模の商標の不正使用及び著作物の違法な複製について適用される刑事上の手続及び刑罰を定める。制裁には、同様の重大性を有する犯罪に適用される刑罰の程度に適合した十分に抑止的な拘禁刑又は罰金を含む。適当な場合には、制裁には、侵害物品並びに違反行為のために主として使用される材料及び道具の差押え、没収及び廃棄を含む。加盟国は、知的所有権のその他の侵害の場合、特に故意にかつ商業的規模で侵害が行われる場合において通用される刑事上の手続及び刑罰を定めることができる。

第4部 知的所有権の取得及び維持並びにこれらに関連する当事者聞手続

 第62条

第5部 紛争の防止及び解決

 第63条 透明性の確保

 第64条 紛争解決

第6部 経過措置

 第65条 経過措置

 第66条 後発開発途上加盟国

 第67条 技術協力

この協定の実施を促進するため、先進加盟国は、開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国のために、要請に応じ、かつ、相互に合意した条件により、技術協力及び資金協力を提供する。その協力には、知的所有権の保護及び行使並びにその濫用の防止に関する法令の準備についての支援並びにこれらの事項に関連する国内の事務所及び機関の設立又は強化についての支援(人材の養成を含む。)を含む。

第7部 制度上の措置及び最終規定

 第68条 知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会

貿易関連知的所有権理事会は、この協定の実施、特に、加盟国のこの協定に基づく義務の遵守を監視し、及び加盟国に対し、知的所有権の貿易関連の側面に関する事項について協議の機会を与える。同理事会は、加盟国により与えられる他の任務を遂行し、特に、紛争解決手続において加盟国が要請する支援を提供する。その任務を遂行するに当たって、同理事会は、適当と認める者と協議し、情報の提供を求めることができる。WIPOと協議の上、同理事会は、その1回目の会合から1年以内に、WIPOの内部機関と協力するための適当な取決めを作成するよう努める。

 第69条 国際協力

加盟国は、知的所有権を侵害する物品の国際貿易を排除するため、相互に協力することを合意する。このため、加盟国は、国内行政機関に連絡先を設け、これを通報し、及び侵害物品の貿易に関して情報を交換することができるように準備する。加盟国は、特に、不正商標商品及び著作権侵害物品の貿易に関して、税関当局間で情報の交換及び協力を促進する。

 第70条 既存の対象の保護

 第71条 検討及び改正

 第72条 留保

この協定のいかなる規定についても、他のすべての加盟国の同意なしには、留保を付することができない。

 第73条 安全保障のための例外

この協定のいかなる規定も、次のいずれかのことを定めるものと解してはならない。

附属書

附属書の付録

 医薬分野における生産能力の評価

後発開発途上加盟国については、医薬分野における生産能力が不十分であるか又は生産能力がないものとみなす。

その他の輸入する資格を有する加盟国については、関係する医薬品の生産能力が不十分であるか又は生産能力がないことを次のいずれかの方法によって立証することができる。

弁理士試験が扱う条約一覧